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2018年10月8日

首都高速道路 震度6強の首都直下地震を想定、「道路啓開訓練」公開

首都高速道路(宮田年耕社長)はこのほど、震度6強の首都直下地震で高速道路の高架橋上に車が滞留した状況を想定し、緊急交通路確保のための復旧作業訓練を公開した。訓練では、高架橋の支承が脱落して橋の継ぎ目に段差や開きが発生し、複数の車両が道路上に滞留した状況を想定。迅速な応急復旧のために開発した軽量修正材などを使い、作業開始から約30分程度で滞留車両を移動させる様子を披露した。

公開された「道路啓開訓練」は、災害時に自衛隊や消防隊などの緊急車両が速やかに通行できる緊急交通路を確保するのがねらい。2014年に改正された「災害対策基本法」に緊急交通路の確保に関する規定が盛り込まれ、これを受けて同社は「道路啓開マニュアル」を策定。地震発生後、国土交通省など関係機関との情報交換の上で啓開路線を決定し、作業を開始する。

◆人力に勝る手段なし
訓練は、首都直下に最大震度6強の地震が発生し、首都高速道路の橋げたを支える部材が脱落。橋梁の継ぎ目に長さ50センチメートル、高さ20~30センチメートルの段差が発生して止まり切れない車両が路面段差に接触、後続車両が滞留して通行不能になった状態を想定して行われた。
滞留車両を移動させる手順として、最初にパトロール隊が被害現場に向かう。パトロールカーが通行できない場合は積んである折りたたみ自転車に乗り換えて現場へ到着。段差の大きさなどの被害状況を本部に伝え、その報告を基に道路啓開部隊が進行方向とは逆向きの後進で現場に向かい、全て人の手で応急作業を行う。

◆三点セットが威力を発揮
橋梁の継ぎ目に発生した段差と開きの解消には、FRP製の渡し板「F―Deck」と軽量土のう、ゴムマットの“三点セット”が威力を発揮する。これまで段差の修正には、重さが一袋25キログラムの土詰め土のうと一枚800キログラムの敷鉄板を使っていた。これらの重すぎる修正材に比べ、FRP製渡し板は重さが30キログラム、ゴムマットは一枚25キログラム、発泡ガラス素材の軽量土のうは一袋5キログラムと圧倒的に軽量で強度も十分だ。
軽量修正材の開発により人力による運搬と設置が可能となり、災害発生時に現場に近寄れない可能性のある吊り上げ機材などを不要とした。作業効率が大幅に向上するだけでなく、重量が軽いため作業車両に多くの修正部材が積載でき、複数の障害箇所での連続作業ができるようになった。
同社は軽量土のうによる積み上げよりも安定性が高まる「EPSフラットブロック」(仮称)と呼ばれる新たな段差修正材を開発中。実用化されれば高さが60センチメートル程度のより大きな段差にも対応できるほか、より作業性が高まることが期待されている。
◆状況に即した撤去手法
段差の修正作業と同時に行われるのが道路上に立ち往生したまま放置されている車両の撤去作業だ。
訓練では乗り捨てられて無人状態となった車を「ゴージャッキ」と呼ばれる車輪付きの台車で移動。行く手を塞ぐ車両を撤去した上で、運転者が乗車していて自走が可能な車両はロープで牽引、無人車はレッカー車のアンダーリフトを使った吊り上げで移動させるなど、状態に応じた移動方法が紹介された。
車両の撤去作業が終わらない状態では被害箇所の復旧にあたる車両や人員が現場に到着できないことから、移動作業隊のメンバーは号令を掛け合いながら手際よく車両の移動を行った。

日刊自動車新聞9月29日掲載

カテゴリー キャンペーン・表彰・記念日,交通安全
主催者

首都高速道路㈱

対象者 一般,自動車業界