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2018年9月18日

スキャンツール補助金終了 異例の早さ、改めて関心高まる

国土交通省による今年度の外部故障診断機(スキャンツール)補助金の公募受付が10日に終了した。補助事業の実務を担うパシフィックコンサルタンツによると、11日時点の申請件数が1345件、交付申請累計額が1億5228万円となり、1億6千万円の予算を超えることが予想されたため10日で打ち切った。残りの予算分は消印日を基準として先着順で採択する。

今年度のスキャンツール補助金は異例の早さで公募受け付けを終了した。昨年度は初めて予算を消化したものの、公募は受付期限である10月31日まで続いていた。
今年度は補助対象にカー用品店やタイヤ販売店など「整備士が在籍し、点検整備作業を行う自動車関連施設」を追加したことに加え、2024年度にも車載式故障診断装置(OBD)を活用した自動車検査(車検)が始まることが広まったため、あらためてスキャンツールへの関心が高まったとみられる。

日刊自動車新聞9月13日掲載

 

開催終了日 2018年9月10日
カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

国土交通省

対象者 自動車業界

スキャンツール補助金終了、背景に事業者の危機感

今年度の外部故障診断機(スキャンツール)補助金が公募受付終了日を待たずに底をついたのは、次世代自動車に対する整備事業者の危機感の表れとも言える。バッテリー交換ですらスキャンツールがないと難しい車種も出始めた中で、国は車載式故障診断装置(OBD)を使った自動車検査(車検)を2024年度にも始めるとともに、カメラやセンサーを分解整備項目に入れる方向で検討を始めるなど、導入の“外堀”は埋まりつつある。もはやスキャンツールは点検や整備に不可欠な整備機器となりつつある。
 国土交通省によると、整備事業者におけるスキャンツールの普及率は8割を超えている。ただ、警告表示を消す簡便なタイプから純正並みの機能を持つ本格派まで製品の幅は広く、必ずしも整備事業者の実力値を反映している指標ではない。また、スキャンツールを導入した事業者の一部から「導入はしてみたが、どう使えばいいのかわからない」といった声が依然として聞こえてくるのも事実だ。13年度に始まったスキャンツール補助金をめぐっても、予算を完全消化したのは昨年度が初めて。それ以前は2次、3次公募まで募って補助金を交付していた。
 しかし、潮目は変わりつつある。今年度の補助金が早期に終了するなど、“宝の持ち腐れ”状態だったスキャンツールに対する意識が急激に変わり始めた。背景の一つは先進安全技術の普及だ。緊急自動ブレーキや車線逸脱警報装置などにはカメラやミリ波レーダーといった検知デバイスが使われており、これらを正しく機能させるためのエーミング作業にはスキャンツールが不可欠だ。
 24年度に始まるOBD検査も整備事業者の導入意欲を後押ししている。現在、国や業界団体らが車検に使う「法定スキャンツール」の仕様などを詰めているが、数年後にはOBD検査に対応するスキャンツールがないと車検業務ができない恐れも出てくる。さらにセンサー類が分解整備項目に盛り込まれれば、スキャンツールを保有し、使いこなさなければ、自動車整備業として会社を存続させることも難しくなる。こうした将来に対するさまざまな危機感が、スキャンツール補助金公募の早期打ち切りとなって表面化したとも言えそうだ。