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2018年8月31日

日産、EVで会津を活性化

電気自動車(EV)で会津創世へ―。日産自動車が、福島県会津若松市で産学官連携によるEVを活用した地域活性化に取り組んでいる。

会津地域は人口減少と少子高齢化が進む中、東日本大震災と福島第1原発事故で、農業や観光など基幹産業は厳しい風評被害に晒されてきた。日産はEVの環境性能だけでなく、「走るだけではないEVの価値やアイデア」を地元コミュニティと一体で創出し、地域経済の活性化や市民生活の利便性向上を実現していく。

会津若松市のシンボルで、国内唯一の赤瓦の天守閣が映える鶴ヶ城。その鶴ヶ城近くで往時の面影を残す名所旧跡が点在する通りで、7月23日、ITを活用して無在庫ながらも洋服やアイテムの試着が出来るアパレルショップカーが披露された。車は日産のEV「e―NV200」だ。

ECサイトや実店舗を運営するセレクトショップ「ズーティー」(兵庫県神戸市)と楽天の研究開発機関「楽天技術研究所」(東京都世田谷区)、会津大学(会津若松市)が共同開発した「遠隔スタイリング支援システム」を、e―NV200に搭載。東京など県外にいるショップ店員が同システムを活用して、会津若松市で衣料品販売を行う実証実験を始めると発表した。開口したリアゲートに特設のフィッティングルームを設営。大人1人が立てるスペースを確保している。来店客はサブモニターを見ながら希望する衣料品を選択し、デジタルサイネージを活用したプロジェクターに映った自身の姿に“試着”ができる仕組みだ。

同システムに使う電源は、車両のバッテリーに蓄えられた電力を活用する。停車時もエアコンが使えるため、季節を問わず快適に買い物できる。日産関係者によると、満充電にしてエアコンを使用しても、実店舗の通常営業時間分は移動式アパレルショップを開くことができるという。
東京など遠隔地の実店舗にいる店員は、来店客に似合ったコーディネートを音声で提案する。気に入った商品やコーディネートはQRコードを使ってスマートフォンからネット通販で購入できる。利用者の反応について、楽天関係者は「当初は照れている様子が見られたが、今の若者はプリクラで慣れているのですぐに馴染んでくれた」という。

同市では近年、若者向けの衣料品販売店が激減。全国展開のファストファッション2社しかない。高校生や大学生は普段、バスや電車で郡山市まで出向いているという。プロジェクト推進の1人である会津大学の藤井靖史准教授によると、「おしゃれしたい若者が洋服を買えない状況で、店員に接客をしてもらうという都市部では当たり前の環境がほぼない」のが実情だ。
「若者に楽しく洋服を選んで買える環境をつくってあげたい」。そんな思いから今回のプロジェクトが始まった。また「ネットの力を肯定し、対抗するのではなく混ざっていくことが大切」(同)との発想から、会津木綿など地元名産品の販売店などとコラボレーションしてECサイトの衣料品と一緒に提案する。実証実験に参加した会津短大2年生の安藤優雨さんは「自分に合った服が見つけられ、試着もできて嬉しい」と話す。
今回の実証実験の仕組みは衣料品以外でも「医療分野にも可能性がある」(藤井准教授)として研究を加速する。

日刊自動車新聞8月28日掲載

カテゴリー キャンペーン・表彰・記念日
主催者

日産自動車㈱

開催地 福島県会津若松市
対象者 一般,自動車業界