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2018年7月24日

ようやく戻る日本橋の空、首都高の地下化が決定

■事業費は3200億円 完成までに10年超
いつかは晴れる、お江戸・日本橋の空―。東京・日本橋地区を通る首都高速道路が地下化されることが決まった。18日に国土交通省で開かれた「首都高日本橋地下化検討会」で概算事業費と事業への枠組みがまとまった。

事業区間は約1・8キロメートルで、必要な事業費は約3200億円。このうち首都高速道路会社が2400億円を負担する。「2020年の東京オリンピック/パラリンピック後に着工するイメージ」(国交省)としているが、その具体的なスケジュールは決まっていない。最も早くても、完成は2030年という長期事業になる。

現在の首都高は、早期の完成を目的に、路線の選定にあたっては用地取得のたやすさを重視。特に都心部では河川や運河、江戸城の堀などの上空を多く活用した。このため、江戸時代には五街道の起点であって、現在でも7本の国道の起点を示す道路元標が埋め込まれ、重要文化財として観光の名所でもある「日本橋」の上空には、首都高の都心環状線がすっぽりと覆い被さっている。
日本橋を含む都市景観を確保する意味から、09年には有識者会議「日本橋川に空を取り戻す会」が発足、首都高を地下に移す構想をまとめた。夢物語とも見られていた構想が具体的に動き始めたのは17年11月。国交省は首都高日本橋地下化検討会を立ち上げた。第1回会合では首都高の地下化に向けた課題の洗い出しを行い、今年5月の第2回検討会では対象区間や地下ルートの案を提示した。そして今回、概算の事業費と事業スキームが決まった。

首都高会社は2400億円の負担金のうち大規模更新費で1千億円を賄う。また「将来的な技術革新によるコスト縮減」(国交省)により400億円を生み出す。さらに、首都高建設にあたり国と東京都が拠出した出資金の償還時期を見直すことで1千億円を捻出する。これは有利子の更新債務の返済を15年前倒し、代わりに無利子の出資金の返済を先送りして利息を軽減するというスキーム。利用料が無料になる2065年の償還期限に変更はないため、「ユーザー負担はない」と国交省は説明する。また、地下化した新路線の開設により、耐震性や安全性が向上し、渋滞対策も進むことから「利用者にもメリットがある」とする。

概算事業費では、400億円を東京都と中央区が交付金や公共用地の活用で拠出、さらに地下化する部分周辺の民間プロジェクトが400億円を負担する。周辺では現在、五つの再開発プロジェクトが進行しており、首都高が地下化することによる景観上のメリットがあるため、「民間も、今回のスキームに同意している」(国交省)という。
ただ、さらなる課題も残る。都心環状線の当該部分の地下化にあたっては、周辺の八重洲線や東京高速道路(KK線)を大型車が通行できるようにする機能強化が欠かせない。そのための費用は3200億円とは別で、しかも、具体策は検討方法も含めて決まっていない。

国交省では今後、関係機関と調整したうえで、都市計画変更の手続きを行い、事業認可などを受けて着工という見通しを示す。着工から地下ルートが完成するまでは「10年から20年が必要」とする足の長い事業だ。そして、ようやく日本橋に空が戻ってくる。

日刊自動車新聞7月20日掲載

開催日 2018年7月18日
カテゴリー 会議・審議会・委員会
主催者

首都工国交省、日本橋地下化検討会

対象者 一般,自動車業界