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2018年6月13日

カーシェアとレンタカー 境界線がなくなる? 重なるサービスや顧客層

レンタカーとカーシェアリングサービスの境界が薄れつつある。両者に法律上の明確な区分はなく、これまでは車種数や貸し出し時間などでそれぞれの特徴を保ってきた。しかし、近年はサービス内容や顧客が重なりつつあり「将来的に(カーシェアと)レンタカーの境界はなくなるのではないか」(三井不動産リアルティ黒川伸吾執行役員)との声も。現在は市場が拡大しているが、将来は生き残り競争も勃発しそうだ。

全国レンタカー協会(全レ協、縄野克彦会長)によると、カーシェアは「レンタカーの貸し渡しの形態の一つ」と言う。レンタカーは店舗での対面引き渡しを基本としており、車種数が豊富で引っ越しや行楽など長時間利用が多い。一方のカーシェアは15分間単位から利用でき、会員制とすることで無人で借り出せる。買い物などの短時間利用から終電を逃した人の車内仮眠まで使い方は多彩だ。

◆貸出・返却場所・車種、特徴組み合わせ
「楽天トラベル」経由でレンタカーサービスを提供する楽天は「ユーザーはレンタカーかカーシェアかをあまり重視していない。重要なのは、貸し出し場所の立地と費用だ」(トラベル事業レンタカー事業グループ平山達也マネージャー)と指摘する。「タイムズカーレンタル」とカーシェア「タイムズカープラス」を展開するパーク24も「カテゴリーで分けるのではなく『タイムズ』という一つのブランドとして(ユーザーに)最適な形でサービスを提供する」と言う。同社はレンタカーをタイムズの駐車場などに運び、無人で貸し出す「ピッとGoデリバリー」も手がける。好きな車両を選べるレンタカーの特徴と、最寄りのステーションで貸し出し・返却ができるカーシェアの特徴を組み合わせた。カーシェアの利用が集中した際、貸し出していないレンタカーで補完する狙いもある。10月までに現状より700拠点増やし、4千拠点に広げる。
「カレコ・カーシェアリングクラブ」を運営する三井不動産リアルティ(山代裕彦社長、東京都千代田区)は月会費無料プランを始めた。カーシェアの特徴である「会員制」のハードルを下げる。一カ月以上の長期利用プランも新設し、レンタカー需要を取り込む。
レンタカー側はカーシェアの特徴である無人の貸し出し・返却を試みる。トヨタ自動車やJR東日本レンタリース(中村浩之社長、東京都千代田区)が昨年末から一部店舗で実証実験を始めた。「若い世代では対人でのやり取りが苦手なユーザーも多い」(レンタカー会社幹部)と言い、無人化でこうした需要を取り込んでいく考えだ。

◆付加価値や効率で競う
足元では「所有から利用へ」といった流れや訪日外国人を含む観光利用の増加、企業の経費削減などでレンタカー、カーシェアともに需要は堅調だ。ただ、もともと利幅の薄い業界だけに、需要が飽和点に近づくにつれ、貸し出し以外の付加価値やIT投資による効率化など企業間競争が激しくなりそうだ。

日刊自動車新聞6月8日掲載

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

日刊自動車新聞社調べ

対象者 自動車業界