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2024年5月08日

国内二輪車市場、回復の足音はっきり モーターサイクルショーも熱気 

原付一種を除く国内二輪車市場が拡大している。日本自動車工業会(自工会、片山正則会長)がまとめた2023年度(23年4月~24年3月)の原付二種(51~125cc)、軽二輪(126~250cc)、小型二輪(251cc以上)の合計出荷台数は26万6267台となり、2000年以降、最多となった。二輪車メーカー各社が若年層とリターンライダーを狙ったモデルを相次いで投入し、市場活性化を図ったことが奏功した。3月から4月にかけて東京・大阪・名古屋で開催された恒例の「モーターサイクルショー」も国内二輪車市場の回復の足音が聞こえるような盛り上がりを見せた。

〇原付一種除いて大幅に拡大

23年度の二輪車の合計出荷台数は同0.2%減の36万2002台と、微減ながら3年連続マイナスとなった。排気量50cc以下の原付一種が同22.4%減と大幅に落ち込んだのが主因だ。原付二種は同16.6%増の13万7401台、軽二輪が同8.4%増の6万897台、小型二輪が同4.0%増の6万7969台と、原付一種を除く国内二輪車市場は大幅に拡大した。

原付二種以上の市場は、リーマンショックによる景気悪化の影響を受けた09年度に20万台を下回った後、12年度まで10万~15万台レベルで推移していた。13年度ごろから、若いころにバイクを保有していたが、途中で手放し、その後、経済的に余裕ができた中高年層が再びバイクに乗る「リターンライダー」が増えた。二輪車メーカーも中高年層をターゲットにした二輪車を市場投入し、19年度には20万台を上回った。

そしてコロナ禍を機に、1人で移動できる二輪車への関心が高まったことで需要が拡大してきた。半導体などの部品不足の影響で出荷台数の伸び率は大きくはなかったものの、半導体不足の問題がほぼ解消したことから、23年度に出荷台数が大幅に伸びた。

〇懐かしのモデル復活も

二輪車メーカー各社は好調な需要を獲得するため、商品投入を活発化している。今春に東京、大阪、名古屋で開催されたモーターサイクルショーでも多くの新型車が公開、展示された。

新型車のターゲットとして各社が据えるのが、まだまだ増える余地のあるリターンライダーだ。ホンダは07年に生産を終了した「ホーネット」を17年ぶりに復活させた。「CB」シリーズの派生モデルとして「ストリートファイター」といわれるスポーツネイキッドモデルに仕上げた。

1980~90年代に流行したレーサーレプリカ全盛期を経験したライダー向けに、フルカウルのスポーツモデルの投入も相次ぐ。ヤマハ発動機は往年のレーシングマシン「YZR500」をモチーフにした「XSR900GP」を展示し、5月20日から販売する。スズキも今年1月、外観はスポーツモデルながらツーリング走行との両立も重視した2気筒エンジン搭載の「GSX―8R」を市場投入した。

若年層ライダーの獲得にも二輪車各社は目を向ける。国内二輪4社の中でも特に若年層ライダー向け商品のラインアップを強化しているのがヤマハ発だ。昨年は125ccクラスの手動変速機(MT)車を一気に3車種投入したが、今回のモーターサイクルショーでは「125ccから広がるバイクライフ」をテーマにした車両やアクセサリーを展示した。狙い通りブースには10~20歳代の若者の姿が目立った。

〇海外メーカーも虎視眈々

海外二輪車メーカーも普通自動二輪免許で乗ることのできる排気量のモデルを日本市場に展開して、顧客の開拓に力を入れる。ハーレーダビッドソンは昨年10月、「スポーツスター」のデザインを彷彿とさせる「X350」を日本市場に投入した。大型二輪車モデルを取りそろえるハーレーの初の普通自動二輪免許で乗ることができるモデルだ。トライアンフのネオクラシックモデル「スピード400」やBMWのスポーツネイキッド「G310R」など、海外勢も日本の免許制度に合わせたラインアップを展開している。

原付一種を除く国内二輪車市場は活性化しつつあるが、自工会の23年度市場動向調査によると、ライダーの平均年齢は55・5歳で、前回調査時の54.2歳から上昇し、バイク人口の高齢化は進んでいる。さらに、調査で二輪車の「継続乗車意向」に関する設問では、60代男性の18%、70代男性の42%が「数年以内」または「10年以内」に二輪車に乗らなくなると回答した。

国内二輪車市場の持続的な成長には、若年層を取り込みつつ、現在のライダーがバイクに魅力を感じて、乗り続ける環境を整備していくことが求められる。

カテゴリー 展示会・講演会
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞5月2日掲載