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2024年4月11日

栃木県ABCプロジェクト 自動運転で実現する安全・安心な地域交通

栃木県(福田富一知事)では、県が主導して2020年度から23年度まで県内各所で自動運転バスの実証実験「栃木県ABCプロジェクト」を実施してきた。自動運転による移動サービスの可能性を探るもので、公共交通機関が十分ではない地域などの社会的課題の解決につなげる狙い。同県では運転免許証を自主返納する高齢者に加え、訪日外国人も増加。地域住民の日常生活や観光地との移動手段の確保が大きな課題となっている。県などはこれまでの実績やデータを検証し、25年度の事業化を目指していく方針だ。

同プロジェクトのABCとは、「自動運転システム(Autonomous)を導入した路線バス(Bus)の本格運行を目指した挑戦(Challenge)」を意味している。18日にはこれまでの活動を振り返る成果報告会「自動運転バスを語ろう@とちぎ」が、ライトキューブ宇都宮で開かれた。産学官の関係者が出席。実証実験の成果や今後の本格的なサービス導入の可能性などについて討議した。

報告会ではまず、県の県土整備部交通政策課公共交通担当の安生真人主査が、プロジェクトの意義、実施内容や県内各市町の協力の下で得た成果などを報告。これを受けて、パネリストの公共交通関係者や自動車関連企業、学識経験者らが議論した。

県や栃木運輸支局などで組織している栃木県無人自動運転移動サービス推進協議会(阪田和哉会長=宇都宮大学地域デザイン科学部准教授)の阪田会長は、「実験は安全なコースを選定して実施したが、交通事故を防止するためにも事前に地域への周知徹底が必要だ」と指摘。その上で、「自家用車とは違い、移動中は自分の時間が効率的に使えるメリットもある」とも強調した。

県内で路線バスを運行している関東自動車(吉田元代表、栃木県宇都宮市)を傘下に持つみちのりホールディングス(松本順代表グループCEO)の浅井康太グループディレクターは、「自動運転バスが増加すれば1台当たりのコストは下がるが、現状では人が運転するバスと比較し、3~4倍のコストが掛かる」とした。県の安生主査も自動運転バスについて、「現状では切り札ではあるが、特効薬ではない」とクリアすべき課題があるとの見方も示した。

一方、東武鉄道の経営企画本部の金子悟課長は、「昨年、日光で実証実験に携わった。一般車が走行できない通行規制がある区間で実施したが非常にやりやすかった」とし、実現の可能性が高い地区から実績を積み上げるアプローチが重要との考えも述べた。

当日は80人の定員を超える多くの来場があるなど、県民の注目を集めた。県土整備部の坂井康一部長は「無人での自動運転移動サービスの実現を通じ、安全・安心で持続可能な社会の実現を目指していくことが必要だ」とし、関係者が協力して課題を一つひとつクリアしていく必要があると総括した。

無人自動運転技術による持続可能な公共交通サービスの確保を目指す同プロジェクトは、25年度の事業化に向けて着実に前進している。これまでの実証実験で、走行データの収集や解析は進んでいるもようで、技術的な面はクリアしつつあるようだ。全国の自治体からも関心が寄せられており、今後のプロジェクトの進展に注目が集まりそうだ。

カテゴリー 社会貢献
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞3月27日掲載