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2024年3月22日

外資系サプライヤー日本法人 オフィス改装で社内連携強化

外資系サプライヤーの日本法人でオフィスを新築・改装する動きが目立つ。ボッシュ(クラウス・メーダー社長、東京都渋谷区)は新本社を兼ねた研究開発拠点(横浜市都筑区)を今年竣工させる。ゼット・エフ・ジャパン(多田直純社長、横浜市中区)は別拠点の技術者を集めるため本社フロアを改装する。ソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)や開発期間の短縮といった環境変化に組織を適応させる狙いもある。

電動化やソフト重視の開発といった新たな潮流に対応するため、サプライヤー各社は組織構成や投資の重点を変えつつある。特に世界中のOEM(自動車メーカー)を相手にする外資系サプライヤーはグローバルで影響を受けており、こうした競争環境の変化がオフィスを見直す動きにもつながっている。

例えば、SDV化では、部門間連携が今まで以上に重要になる。ハードとソフトとを一体開発する今までの手法から、アーキテクチャ(構造)を明確にした上で、ハードとソフトと分けて開発する必要があるからだ。さらに高性能なソフトと車載コンピュータを用い、ブレーキやステアリング、サスペンションなどを統合制御することで、安全性や乗り心地、運動性能を効果的に高めることも可能だ。サプライヤーの組織も、こうした開発を効率良く進めるため再編する必要がある。

ボッシュは、新社屋で事業部を超えたコラボレーションを促す設計を取り入れる。吹き抜けの階段を2カ所設け、事業部間を行き来しやすくするほか、可動式の壁を使い、小規模な会議をすぐに開けるスペースも設ける。組織面でも、ステアリングとブレーキシステムを扱う事業部とを今年1月に統合した。

ゼット・エフ・ジャパンは横浜市のオフィスと研究開発拠点を再編する。別拠点で勤務していたブレーキや先進運転支援システム(ADAS)の技術者を本社に呼び寄せるため、フロアを改装する。ソフト開発者を含め、部署間の物理的距離を縮めるのが狙いだ。独ZFによる受動安全事業の分社化も背景にある。

新事業の創出もねらいの一つだ。同社は電動トラックの販売を通じ、車載電池を循環させる日本独自の「エナリティ事業」に取り組む。従業員の国籍が15カ国にわたる多様性を生かすため、オフィスの改装にも知恵を絞る。

自動車業界では今、開発の短期化が中国を中心に急激に進む。事業の持続可能性といった新たな課題への対応も必要だ。コロナ禍でリモート勤務が定着したが、事業環境の変化に適応して勝ち抜くためには対面でのコミュニケーションをより深める必要性も浮上している。

ヴァレオジャパン(アリ・オードバディ社長、東京都渋谷区)も本社オフィスを改装する予定だ。オードバディ社長は「フェイストゥフェイスで関係を深めることで、開発期間の短縮や加速ができる」と狙いを語る。

日本ミシュランタイヤ(須藤元社長)は、昨年移転した群馬県太田市の新本社敷地内に「コラボレーションスペース」を建設中だ。持続可能性など多様化する事業課題への対応策を、社内外の関係者と協議し、共創する場としての活用を見込む。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)が進展する中、組織とともに働く場所を見直す動きが今後も広がりそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞3月21日掲載