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2024年3月13日

日野、北海道帯広市に「調査拠点」設置 対話通じ公共交通の課題探る

日野自動車は、北海道帯広市の大空団地に、新たな調査拠点「帯広分室」を開設した。地域住民や利用者との「対話」を通じ、地方の公共交通が抱える課題を洗い出そうとする斬新な試みで、同社ソリューション事業部の執行職1人が常駐する。人口減少やドライバー不足などを背景に、国内のバス・トラック市場が厳しさを増す中、商用車メーカーとして、地域に寄り添うモビリティサービスの在り方を探り、次世代の新事業に結び付けたい考えだ。

「これから乗車体験する車両は、私たちの生活の中でどう活用できる?」。団地内にある大空学園義務教育学校。帯広分室に駐在する同社ソリューション事業部の松山耕輔氏(64)が、同校の8、9年生(中学2、3年生)約70人に問いかけた。

授業は、地元の十勝バス(帯広市)およびパートナー企業と共同で実施。日野が開発した超低床構造の小型電気トラック「デュトロZ EV」や、十勝バスが試験運行している貨客混載バスなどに乗車してもらいながら、日々の暮らしの中でモビリティの新たな活用方法を考えるきっかけを提供した。松山氏は「若い年代から自分の住む街や交通のことを考えてもらうことで、公共交通の維持・発展につなげたい」と授業の狙いを説明する。

移動手段に自家用車が多く使われる地方に住み、地域の住民や子どもたちと対話を重ねることで、商用車の新たな価値を見いだそうとしている。「消費者や利用者と『共感』することで、そこに新たなサービスが生まれる。公共交通が選択肢の一つとなる機運を醸成していきたい」と話す。

帯広分室は2023年1月に開設。同社ソリューション事業部が目指す「運輸運送分野の社会的課題の解決」を具現化するための事業の一環として立ち上げられた。ドライバー不足や交通事業者の撤退など、トラックやバスの車両を改良・改善するだけでは解決不可能な課題が山積する中、商用車メーカーの日野と十勝バスがタッグを組み、「地方交通をいかに維持し、支えていくかを探る活動」(松山氏)を展開している。

公共交通の先細りが懸念される中、日野自動車は23年7月から、自家用有償旅客運送の枠組みで自家用車を使った移動サービスを行う自治体を支援する「運行管理の受託サービス」を開始した。現場での負担が重いとされる点呼業務をソリューション事業部が遠隔(リモート)で代行する。現在は鳥取県智頭町など山陰地方を中心に、交通事業者が撤退した地域の運営主体を支えている。松山氏は「将来的には、北海道でも事業を展開していきたい」と話す。来たる自動運転社会を見据えながら、商用車メーカーとして、地域ごとに異なる運行管理サービスの在り方を模索していく考えだ。

松山氏は「エネルギーやコストをかけて製造した車両の稼働効率を引き上げ、100%使い切ってもらうためにわれわれが何をするべきか。そのためのアプローチの一つがこの取り組みだ」と話す。ユーザー側の視点に立ったサービスの創出を目指し、今後も地域と対話を続ける。

カテゴリー 社会貢献
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞3月11日掲載