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2024年3月06日

電動化対応進める建機メーカー 普及へ自治体や施工会社と共通認識必要

建設機械メーカーが、電動化対応を本格化している。油圧ショベルなどを手掛けるコベルコ建機(山本明社長、東京都品川区)は燃料電池式電動ショベルを試作し、稼働評価を開始した。タダノは2026年度を最終年度とする中期経営計画で、電動ラフテレーンクレーンの世界展開と電動化製品のラインアップ拡充を表明した。国土交通省が23年10月に「GX建設機械認定制度」を開始するなど、建設施工現場でも脱炭素化が要望されるている。こうした中、各社は早期に商品を具体化して電動建機の重要性の浸透を図り、市場形成につなげていく考えだ。

コベルコ建機は23年9月に燃料電池式電動ショベルの稼働評価を始めた。試作機は、中型油圧ショベルを改造しトヨタ自動車から調達した燃料電池ユニットと水素タンクを搭載したもの。同社の技術開発本部では「水素関連の法規制見直しに加えて、自治体と水素サプライヤー、施工会社の協力が得られれば26年頃に実証実験を行いたい」と抱負を述べた。

同社は25年にもバッテリー式のミニショベルや小型重機ショベルの欧州投入を目指している。さらに、国内では有線電動仕様のクローラークレーンを発売する予定だ。

同社は電動建機の普及について「建機メーカーだけでは難しい。(自治体や建設現場の関係各社が)カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)の施工を実現するという共通の認識も必要だ」とみており、その重要性を広めながら同分野における優位性を確立し、いち早い事業化を目指す。

タダノは、世界初の電動ラフテレーン(自走式)クレーンを23年12月に発売した。商品化の公表は、発売1年前という同社としては異例に早いタイミングで行った。その狙いについて氏家俊明社長は、ユーザーや建設関係者に「当社は機械(電動クレーン)を用意するので、(あらかじめ)充電対応を考えた現場にしてほしい」というメッセージを送ることにあったとする。同クレーンは2月に発表した26年度までの中期経営計画で北米・欧州・豪州への投入を表明しており、グローバル市場を見据えて量産化につなげていく構えだ。

さらに同社は、買収した自走式クローラ高所作業車メーカーの長野工業(木曽卓社長、長野県千曲市)を通じ、電動高所作業車を開発する方針も打ち出した。電動トラック(EVトラック)にブームやバケットなどを架装した「EVトラック利用高所作業車」の開発も視野に入れるなど、多様なバリエーション展開を構想する。

建機メーカーでは、小松製作所もリチウムイオン電池搭載の新型13㌧クラス電動ショベル「PC138E―11」を市場投入。住友重機械工業の子会社住友建機は7・5㌧の小型電動ショベルを開発した。

こうした各社の動きを受けて、政府が電動建機の普及を後押しする。国交省は23年12月にGX建設機械認定制度初の対象機種を選定。コベルコ建機、小松製作所など4社の電動ショベル15機種が認定された。

ただ、電動建機はまだ商品化がスタートしたばかりで、その本格導入には充電インフラの整備、購入補助金などが必要な施策になろう。施工会社への理解を促すためにも、政府と業界の連携深化が求められる。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞3月4日掲載