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2024年3月01日

塗料メーカー各社 車体整備事業者へ技術指導に力

塗料メーカー各社は、車体整備事業者に対する技術支援に力を入れている。事業者の工場を訪問して直接指導に当たっているほか、常設の研修会場で技術レベルなどに応じた講義、実技を行っている。コロナ禍が収束し、研修への参加意欲も高まっている。塗料各社は車体整備事業者が抱えるさまざまな課題に、研修を通じた技術支援で対応していく考えだ。

「塗料メーカーが開催する技術研修でニーズがあるのは」―。この問いに複数の塗料メーカーは、基礎レベルの塗装講習を挙げる。実際、ロックペイント(内海東吾社長、大阪市西淀川区)の担当者も「塗装の基礎コースが一番多い」としている。新しく入社したり、新たに塗装を担当したりといった人が対象だが、「塗装の基礎はメーカー(の研修)で受けた方がいい」と続ける。例えば、硬化剤を使う必要性など、経験を積んだ塗装担当者が普段の業務で行っていることを、未経験者は理解していないことが多い。研修で基本的なことを早い段階で学ばなければ、いずれは大きなトラブルになる可能性があるからだ。

BASFジャパン(石田博基社長、東京都中央区)のコーティングス事業部は2023年、塗装の技術研修に未経験者を対象とした「レベル0」の技術研修を追加した。これまではレベル1~3の3段階だったが、未経験者への教育ニーズに対応した。同年は新羽リフィニッシュコンピテンスセンター(横浜市港北区)で3回開催したが、定員はほぼ埋まったという。

基礎レベルの講習の需要が大きいのは、人材不足に加えて自社での育成に手が回らないという面もある。アクゾノーベルコーティング(カイ・ファン・アレム代表、東京都港区)は「車体整備事業者は新人教育と調色に困っている」としている。

一方、関西ペイントの担当者は「若い経営者は短期間で人を育てる仕組みを求めている」とも指摘する。同社が2カ所のオートリフィニッシュセンター(ARC)で行う技術研修では、個々の事業者に合わせて内容を決める「オプショナルコース」を利用する事業者が増えている。入社した人材を早期に戦力とするため、短期間で「現場で(スプレーガンを)吹けるようにしたい」というニーズが多くなっているためだ。

また、イサム塗料では原色の特性などを学ぶ「カラーマッチングスクール」が人気講座の一つになっている。塗料の色見本を手掛ける同社のカラーセンターが講義を担当。年齢や経験年数に関係なく、調色や色への理解を深めたい人が受講している。アクサルタコーティングシステムズ(齋藤友良社長、東京都港区)では、同社のリフィニッシュトレーニングセンター(RTC、栃木県宇都宮市)のインストラクターから直接学びたい人が、全国各地から訪れるという。RTCに導入している設備を参考に、自社の設備改善につなげる事業者もいるという。

こうした研修のニーズは、今後も根強いとみられる。日本ペイント(喜田益夫社長、東京都品川区)でも「多種多様なニーズがある」と認める。ただ、車体整備事業者に人材を育てるための時間の制約もあるため、同社はニーズと時間のバランスを取りながら、最適なフォローを行っていく考えだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞2月26日掲載