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2024年2月27日

北海道から考える「2024年問題」 国交省と経産省、物流効率化でシンポ

物流の停滞が懸念される「2024年問題」の要因の一つとされるトラックドライバーへの残業規制適用が迫る中、国土交通省と経済産業省は19、20日に、物流の効率化対策を考えるシンポジウムを札幌市内で開催した。そこでは、都市間の距離が長い北海道特有の物流課題を解決するため、全道127カ所の「道の駅」を活用した中継輸送の導入や、業種の枠を超えた共同配送の在り方などを議論。全国に先駆けて新たな「共同輸配送システム」を構築していく方向性を確認した。

シンポジウムは、国交省北海道開発局と北海道運輸局、経産省北海道経済産業局の共催。道内の物流事業者や荷主らと今後の対策を考える「北海道物流WEEK(ウィーク)」(19~22日開催)の一環として行われた。会場では、トラック運転手の残業時間上限が年960時間に制限される「働き方改革関連法」の施行(4月1日)まで「残り1000時間」を切ったことを示すタイマーをモニターに表示し、危機感を共有した。

■共同配送は異業種・他地域との連携がカギ

野村総合研究所の調査によると、このまま何も対策を講じない場合、北海道では2030年に27%の荷物が運べなくなるとの試算がある。その一方で、企業や業種の垣根を越えた共同輸送・中継輸送の輪が広がり、積載率が改善されれば、輸送量不足はほぼ解消できるとの見通しも出された。

同研究所アーバンイノベーションコンサルティング部の小林一幸グループマネージャーは「北海道では同業種同士の共同配送が着実に進んでいる。今後は発着地点の異なる異業種や他地域と連携していくことが重要で、物流の大幅な効率化が実現できる」と説明した。

道内では道の駅などを活用した中継輸送の実証試験も進んでいる。北海道開発局道路計画課の担当者は、全道に127カ所ある道の駅に加えて、広い場所を確保できる除雪ステーション(全道134カ所)や非常駐車帯・チェーン着脱場(同211カ所)などにも中継ポイントを置けば、通行止めなどが発生した場合も円滑に中継輸送が行えると説明。物流の効率化に向け、インフラ整備の重要性を強調した。

さらに、札幌市と稚内市のほぼ中間に位置する名寄市の加藤剛士市長は、名寄インターチェンジ(IC)周辺に道の駅と似た機能を備える新しい物流中継拠点施設を整備する構想を明らかにした。加藤市長は「官民一体で新たな取り組みを共創し、具現化していきたい」と意欲を述べた。

■「2024年問題」の影響、秋から冬にかけて表面化か

北海道開発局の小島吉量次長は、主催者あいさつで「物流の問題はまったなしの状況。効率的な配送を実現するために、輸送業者や荷主、消費者がそれぞれの立場を越えて協業していかなければならない」と述べ、製造・卸売・小売業など業種の枠を越えた連携強化に期待を込めた。北海道経産局の岩永正嗣局長は、インターネットを活用した協業型の輸配送手段「フィジカルインターネット」の重要性を強調し、「北海道は物流改革のモデルになり得る」とあいさつした。

登壇した北見工業大学地域未来デザイン工学科の髙橋清教授は、全国の約2分の1のトラック事業者が残業時間の上限を超えるドライバーを抱えていると指摘。「(2024年問題の影響で)早ければ今年の秋から冬にかけて、物流の状況が厳しくなると予想されている。北海道は特にその影響が懸念されるが、中継輸送・共同輸送を推進することが課題解決の糸口となる」と打開策を説明した。2日間にわたるシンポジウムには、オンラインを含め総勢750人の関係者が参加した。

カテゴリー 展示会・講演会
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞2月26日掲載