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2024年2月07日

スズキ インド人従業員が働きやすく、ベジタリアンメニュー充実

ふるさとの味でパワーチャージ―。インド人従業員が日本で働きやすい環境をスズキが整えている。本社や工場の食堂で提供するインドベジタリアン料理のバリエーションを1月から増やした。地元で飲食業などを手がける鳥善(伊達善隆社長、浜松市中央区)とともにメニューや冷凍パックを開発し、手頃な価格と安定した品質を確保した。鈴木俊宏社長は「私たち日本人が海外に出たとき、日本食を食べて活力を得ることと同じで、インド人も(インド料理で)活力を発揮する。それぞれの国民・民族に合った食は重要だ」と語った。

理数系の教育に熱心で英語もできるインド人材には世界の企業が注目している。現地で乗用車シェアの半分を握るスズキもそのうちの一社だ。自動運転や電動化などの先進技術に欠かせないIT人材として、日本でインド人の受け入れを進めている。鈴木俊宏社長は「日本の将来を考えるとインド人に限らず、多様性に対応することは非常に重要だ」と強調する。

スズキは、インド料理を30年以上前から食堂で提供している。インドでは宗教上の制約でベジタリアン(菜食主義者)が多い。同社では試行錯誤を続け、直近では5種類のインドベジタリアン料理を日替わりで提供していた。1食当たり550円と価格も手ごろだが、人材開発本部人事部厚生グループの担当者は「(5種類だと)ヘビーローテーションになってしまう。もっといろいろなメニューを食べたいという意見があった」と振り返る。食堂ごとに味のバラつきがあることも課題だった。

こうした点を鳥善に相談したことが、今回のコラボレーションのきっかけだ。インドベジタリアン料理を出す飲食店は日本でも増えているが、社員食堂などでの取り扱いは「未開拓な状態」(鳥善の伊達社長)だった。課題は大きく①インドは地域ごとに味の嗜好が異なる②価格をどう抑えるか―の2つ。価格面では、インディカ米の一種であるバスマティライスとジャポニカ米を混ぜるなどの工夫で、本場並みの食感や味と従来と同等の価格を両立させた。

新メニューは1月15日から提供を始めた。メインの汁物「トマトレンズダール」や「南瓜サンバル」「茶ひよこ豆マサラ」、副菜の「じゃがいも青菜炒め」や「キャベツサブジ」などだ。これらは鳥善が調理し、冷凍パックでスズキに納品する。このため、味のバラつきもなくなり、本格的なインドベジタリアン料理をどの食堂でも食べられる環境が整った。

1日には本社食堂で報道向けの試食会を開き、鈴木社長や中野祐介浜松市長、鳥善の伊達社長、スズキのインド人従業員らが参加した。入社4年目のカライヤルワン・カティルキシャンさんは「以前よりもおいしくなった。味もちょうど良く食べやすい」と笑顔で話した。

鈴木社長は「社内の限られた範囲で(こうした取り組みを)考えるのではなく、浜松市の飲食店が同じようなことをし、いろいろなコミュニティーが融合することが大事だ」とも語る。スズキとしては、こうした取り組みを先導することで地域の多様性を育み、経済や文化などの活力を引き出していく考えだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞2月3日掲載