福井県は、妊婦や子どもが付き添いなしで活用できるタクシーの運行サービスを実施している。交通インフラの大部分を自家用車が担う同県において、諸事情で自動車を運転できない場合、行動範囲が狭められる。県を挙げ、子育て世帯の移動を支援することで、県内外に子育てがしやすい県としてのPRにつなげる。

サービスは「ふく育タクシー」と銘打ち、2023年10月に運行を開始した。現在同県は「親超優遇!ふく育県」をキャッチコピーに、子育て支援の政策を推進しつつある。ベビーシッターの派遣や男性の育児休暇奨励金の支給、不妊治療への負担金軽減などに加えて、ふく育タクシーを移動手段の支援として打ち出す。

対象となるのは妊娠中の女性や子ども、その家族。出産前の検診や陣痛時の通院、子どもの送迎などを想定する。県内の事業所から専用の研修を経て認定を受けたドライバーが、認定証ステッカーを車両に貼付して運行している。事前予約が必要で、通常のタクシー料金と同じ金額が発生する一方、妊娠中の女性や子どもに対する乗降サポートやチャイルドシートの設置など、適切な補助を受けることができる。現在は17事業所90人が認定ドライバーとして活動しており、今後は100人に増員する。

一方で課題もある。一つは県内のタクシー事業所にチャイルドシートが普及していない点だ。現在6歳未満の未就学児童にはチャイルドシートの使用が義務付けられている。研修でも、日本自動車連盟(JAF)福井支部(福田竜一支部長)が実施するチャイルドシートの設置方法説明が含まれる。

一方でタクシーにはチャイルドシートの設置義務はなく、事業所にシートを確保していない事業者は多い。同県ではふく育タクシー認定ドライバーが所属する事業者を対象に、チャイルドシート購入資金の補助を実施。早急なチャイルドシート導入を呼び掛けている。もう1点は利用対象世帯への認知拡大だ。サービスには事前登録と予約が必要となる一方、県民の中にはサービスの存在自体を知らない場合もある。県担当者は「認知度向上へのさらなる施策が必要」と表情を引き締める。