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2024年1月25日

「オートモーティブワールド」開催 出展各社、EV向けアピール

「オートモーティブワールド」が24日、東京ビッグサイトで開幕した。出展各社が狙うのは、eアクスルや車載電池、パワー半導体など電気自動車(EV)のコア部品だ。内燃機関部品を主力としていたメーカーが「EV向け」を全面的にアピールするケースもあった。また、2030年以降の車両開発の方向性を探る提案も見られた。会期は26日まで。

最も目立ったのは、モーターやeアクスルなどEVの駆動領域での提案だ。黒田精工は、モーターコアの中核技術「マグプレックス」を展示した。マグプレックスは薄板を一枚ずつ接着材で固着する「接着積層」を用いる。現在主流の「ダボ積層」は、薄板にへこみをつけて積層するため鉄損が発生しやすく「接着の方がダボより電費を10%ほど向上できる」(担当者)という。EV向けでは接着積層の引き合いが増すと見込んでおり、高価格帯のEVに狙いを定めて受注を目指す。低価格を売りにする中国メーカーもあるが、「価格よりも品質で勝負する」(同)と差別化を目指す。

eアクスル向けでは、藤倉コンポジットも開発中の専用のゴム材料を提案した。eアクスルで用いられるオイルは高温下での使用に耐えられるよう設計されているぶん、ゴムへの攻撃性がガソリン車用よりも高く、ゴムが硬化しがちという。同社が開発したゴム材料は、物性低下率を従来品の8分の1に抑えることに成功した。

藤倉コンポジットは、Oリングやガスケットなどゴム製品を手がける。ただ、EV化で不要になる製品も多く、「ゴムに付加価値をつけて提案することが課題だった」と担当者は話す。新材料の「フレガード」は高温で膨張する特性を持ち、バッテリーケースの緩衝材としてだけでなく、火災時に延焼を止める役割も担う。膨張率は10~60倍、600度で10分ほどの耐久性を持っており、今後車載電池向けに提案していく。

EVでの採用増が見込まれるSiC(炭化ケイ素)パワー半導体関連では、STマイクロエレクトロニクスや三菱電機などが相次いで次世代品を披露した。ボッシュが出展した最新のSiCパワー半導体は、ゲート電極を埋め込み、より抵抗を下げられる「トレンチ構造」を用いている。

製造が難しく、現状は独インフィニオンやロームなどメーカーが限られるが、ボッシュは車載センサーなどに使われるMEMS(微小電気機械システム)の量産実績を生かした。今後も開発を続け、26年投入予定の第3世代では第1世代から動作時の抵抗を半減させ、30年以降はSiCに加えてGaN(窒化ガリウム)の活用も見込む。

独材料メーカーのエンバリオは、バイオマス(生物由来)100%の樹脂材料「エコパックス」を提案した。吸水性が低いため物性変化が発生しにくい特徴を持ち、日本精工や日立アステモのギアなどで採用された。「将来的にはeアクスルでの採用も狙っていく」と担当者は意気込む。

同社は、市場で使用済みの製品をリサイクルして再び使用する「ポストコンシューマーリサイクル(PCR)」材料も提案した。欧州連合(EU)が30年以降の施行を目指す「ELV規制」では、域内で生産販売する新車1台に対し、PCR材料を25%以上使用することが義務づけられる。このうち約6%は自動車からの材料で担う必要がある。PCR材料は現行車ではほとんど使用されておらず、「30年に向け引き合いが増す」と同社は期待していた。

カテゴリー 展示会・講演会
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞1月25日掲載