会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2024年1月22日

自動車メーカー、相次ぎ新型車 キーワードは「スポーツ」と「アウトドア」

「スポーツ」「アウトドア」をキーワードに自動車メーカー各社が新型車を提案する。トヨタ自動車と日産自動車、ホンダは今年、新たなスポーツモデルを投入する。スズキやいすゞ自動車はアウトドアユーザー向けに、カスタマイズ(合法改造)による新たな顧客層の開拓を目指す。近年は電気自動車(EV)や先進運転支援システム(ADAS)などに関心が集まりがちだが、各社はクルマが持つ「操る楽しさ」や機動力を改めてPRし、新車需要を喚起する。

トヨタの目玉の一台は、今春の発売を予定する新型「GRヤリス」だ。新たに開発した8速自動変速機(AT)の搭載モデルを追加設定したほか、運転席も視認性や操作性を改善した。クルマ好きの間で「ここまでやるか?」と話題になったのは、一部グレードに「縦引きパーキングブレーキ」をオプション設定したことだ。パーキングブレーキを走行中の姿勢制御に用いる競技車両の装備で、市販車のメーカーオプションに設定されるのは初めてとみられる。トヨタは、本格的な走りを楽しみたいユーザーのニーズに応える。

日産はEV「アリア」に「NISMO」モデルを設定し、今春に発売する。モーターの特性上、EVはもともとゼロ発進や加速が得意だが、NISMOモデルは最高出力を10%高めるとともに「NISMOモード」として加速力を一段と高めた。日産モータースポーツ&カスタマイズの片桐隆夫社長は「長年培ったEVやモータースポーツの技術がもたらす『電撃』をアリアの風格に加えた」と話す。

ホンダは、シビックに新たな「RS」を設定して今秋に発売する。詳細は明らかにしていないが、6速手動変速機(MT)を設定するスポーツモデルだ。ホンダはEVシフトを公言しているが、MTの設定グレードを拡充し「操る楽しさ」を提供する。時期は公表していないが、マツダも「マツダスピリットレーシング」というスポーツ系のサブブランドを立ち上げ、第1弾として「ロードスター」を発売する。

一方、コロナ禍でブームが加速したアウトドアレジャーと組み合わせた新車の提案も増えている。スズキは、アウトドア仕様にカスタマイズした軽ハイトワゴン「スペーシア」を東京オートサロンで展示した。

同車のユーザーは約7割を女性が占めるが、今回は男性へのアプローチとして「父と子と犬1匹がキャンプをする」というコンセプトを設定し、車両に用いるキッチンや冷蔵庫、車両に貼付したステッカーに至るまで、すべて社内でデザインした。同社担当者は「スズキとしてここまでカスタマイズに力を入れることは珍しい」と自慢する。

スズキ国内営業本部の石黒芳紀営業推進部長は「カスタマイズで軽に注目が集まっている」と話す。こうした追い風を逃すまいと、軽メーカーとしてさまざまな提案を急ぎ、拡販につなげていく。

商用車メーカーのいすゞもアウトドアに着目している。オートサロンでは、普通免許で運転できる「エルフミオ」の荷台にテントや望遠鏡などを積んで新しい使い方を提案した。担当者は「昼間は働くクルマ、休日は遊びに使えるようなコンセプトカーにした」という。

CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の潮流の中で、新型車も環境性能や安全性能に関心が集まりがちだ。ただ、本来は性能が高まった車をどう楽しむかも重要なファクターだ。自動車メーカー各社は、次世代技術の開発を進める一方、ユーザー目線に立った提案で販売増や自動車市場の活性化に挑む。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞1月20日掲載