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2024年1月16日

京都の新車ディーラー 店舗に「和風テイスト」デザイン相次ぎ導入

1200年以上の歴史を持つ古都京都。金閣寺、祇園神社、京都御所などの世界遺産や歴史的建造物があまた存在する。日本で随一、世界でも類を見ない観光地だ。そのような独特の環境の中で、京都府内の新車ディーラーが拠点リニューアルを機に相次ぎ〝和風テイスト〟のデザインを店舗に導入している。「景観条例」をはじめとした建築にかかわる制約や人口分布が偏る市場環境への対応といった課題が見られる中、各社は店舗づくりの工夫を通じて京都らしさを打ち出し、さらなる顧客支持の獲得につなげていく考えだ。

〝京都らしい店づくり〟を実践したのは、京都ダイハツの本社・五条カドノ店(京都市右京区)、スズキ自販京都のアリーナ西陣(同上京区)、京都トヨペットのレクサス西大路(同右京区)、ネッツトヨタヤサカの大久保店(京都府宇治市)など。いずれも外装からショールーム内までを和風テイストに仕上げ、他拠点と一線を画した雰囲気を打ち出した。

例えばレクサス西大路では、芸術家が制作した一品物の什器や備品を飾り、高級感と落ち着きを演出した。ネッツヤサカ大久保店は黒基調の外装を採用し、待合スペースやキッズコーナーはウッド調をベースにデザインを仕上げた。

他の新車ディーラーでも、拠点リニューアルに際し〝京都らしさ〟の導入を検討している。自動車メーカー系ディーラーでは、店舗に統一デザインを導入することが通例だった。京都各社の取り組みは、地域の歴史・伝統を反映した独自の店づくりを通じて、新規需要の獲得や顧客満足の向上を目指した動きといえる。

こうした新しい店づくりは、新車受注やサービス入庫客の拡大に一定の成果を上げている。「どのような雰囲気や設備を取り入れるかは別として、店舗にはある程度の特徴やカラーを打ち出すことが不可欠」(ネッツトヨタヤサカ・粂田一幸副社長)とみている。

一方で、今後も京都市内に同様な店舗を開設するのは簡単ではないという実情がある。まず、市内中心部は地価が高く、新たな拠点開設には設備投資に見合う収益の確保が難しいことが挙げられる、住民には実家を離れ大学や専門学校に通う学生が多く、新規顧客の開拓にはつながりにくい。さらに、地下を掘り起こすと歴史的な文化財が出土し工期が延びるなど思惑通りに新拠点を開設できない可能性も考えられる。

府内全域に拠点を展開する新車ディーラーにとって、需要が京都市に集中する傾向もネックになる。京都府の調べによると、府内の市町村別人口で京都市が占める比率は56・9%(2023年12月1日現在)で、毎年着実に上昇している。言わば、都心部に人口が集まる傾向が顕著であるにも関わらず、その場所で新拠点の開業が困難ということだ。

京都市独自の施策として有名な「景観条例」も、新拠点の開設には足かせとなる。市街地では建物の高さや看板、広告の掲載に厳しい制限が設けられている。コンビニエンスストアやファミリーレストランなどの全国チェーンも、京都だけは落ち着いた色彩にブランドのロゴや装飾を変更することが必須となる。自動車販売店にも遵守が求められており「インポーターのCI(コーポレートアイデンティティー)に基づいた店舗を開業するため、毎年違約金を支払っている」(京都の輸入車ディーラートップ)という声が上がる。

こうした中で登場した〝和風テイスト〟の店舗は、市場環境や建築規制などを見据えた上で、持続的な成長を目指し生み出されたアイデアと言える。各社の取り組みの成果が注目される。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞1月12日掲載