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2023年12月21日

スタートアップ 軽トラ・クレーン・救急車で「空飛ぶクルマ」

スタートアップ各社が、ドローン(無人機)や「空飛ぶクルマ」などのエアモビリティをトラックやクレーン、緊急車両へ応用しようとしている。産業用ドローンのプロドローン(戸谷俊介社長、名古屋市天白区)は「空飛ぶ軽トラ」や「空飛ぶ救急車」を提案。ワールドスキャンプロジェクト(上瀧良平CEO、東京都新宿区)は「空飛ぶクレーン」の試作機を開発し、飛行試験に成功した。エアモビリティがさまざまな産業車両の役割を代替する可能性も広がりつつある。

空飛ぶクレーン「スカイクレーン」の試作機の飛行試験に10月末に成功したワールドスキャンプロジェクト。同社は、未来の建設インフラの一環として空飛ぶクレーンを開発中だ。4枚のプロペラを搭載した機体は、自重(70㌔㌘)より重い80㌔㌘の荷物を乗せ、地上から1㍍の高さまで浮上し、7分ほど高度を維持した。性能をさらに高めれば、貨物船への積荷作業や、鉄塔メンテナンス時の資材運搬などに活用できる可能性があると同社はみている。

プロドローンは、開発した物流ドローン「空飛ぶ軽トラ『SORA―MICHI』(コンセプトモデル)」をジャパンモビリティショー2023で世界初公開した。同社の想定によると、50㌔㌘の荷物を積んで50㌔㍍ほど飛行でき、地上では無人搬送車(AGV)として走るという。「空飛ぶクルマ」と謳(うた)いつつ、各社の機体は電動垂直離発着機(eVTOL)が多いが、SORA―MICHIは名実とも空飛ぶクルマと言える。

同社は、ドローンを活用した「空飛ぶ救急車」も開発し、飛行試験に成功した。搭乗可能人数は1人で、ストレッチャーも搭載できる。機体は折りたため、車両に積載して運ぶこともできる。山間部が多く、過疎地も増えている日本で、救急搬送の新たなツールとして活躍が期待される。

空飛ぶ救急車は、世界的にも注目されている。例えばeVTOLを手がける豪州のスタートアップ、AMSLエアロや米国のジャンプ・エアロなどで開発が進む。国際民間航空機関(ICAO)が支援する空飛ぶ救急車の開発プロジェクト「アンブラル」などもある。

矢野経済研究所によると、2025年の空飛ぶクルマの世界市場規模は約608億円の見通し。50年には180兆円超へと急拡大する。ドローンも21年の1兆8687億円から27年には2兆9988億円になると見通す。旅客需要が話題になる空飛ぶクルマだが、現実的には、こうした産業用や救急用の市場が先に〝離陸〟しそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞12月16日掲載