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2023年4月12日

ESV国際会議 自動車・部品メーカー、安全製品や開発ツール披露

「レベル4」(特定条件下における完全自動運転)車両の公道走行が4月から国内で解禁された。自動運転技術の水準が上がるに連れて事故やドライバーの負担が減ることも期待されるが、当面は一般車両に混じって走ることになるし、自動運転車の故障もあり得る。

自動車の安全技術に関する「ESV国際会議」(3~6日、パシフィコ横浜)では、官民の専門家による議論に加え、自動車・部品メーカーがアクティブ(予防)、パッシブ(受動)の両面で安全製品や開発ツールなどを披露した。

ZFは自動運転と電動化が進んだ将来の車内空間を想定し、モーター駆動のシートベルト巻き取り装置「アクティブコントロールリトラクター」のデモを実施した。車載カメラと連動させることで、車両に迫る危険をベルトの振動で伝えたり、緊急時には瞬時にベルトを巻き上げて乗員をシートに密着させたりする。同社は、情報を触覚的に伝える「ハプティクス」技術を研究しており、危険度合いに応じて振動パターンなどを変え、警告の実効性を高める。

同社は、自動運転車への搭載をにらんだエアバッグも開発中だ。「エアバッグコンフィグレータ」はドライバーが座席を倒した状態にも対応する。衝突時に乗員が前方に潜り込むことを防ぐため、かかとや座面でのエアバッグ展開をシミュレーションできる開発ツールだ。実際の車両データを用いて、最適なエアバッグの配置や展開方法を検証できる。

エアバッグなどで世界シェア約4割を誇るオートリブも、将来のモビリティを想定した製品群を展示した。「シート集約型保護装置」は、背面からエアバッグを展開する。自動運転車での着座姿勢の変化を想定し、乗員の動きに追従し、上半身を包み込むようにして保護する。

予防安全領域では、製品の進化に役立てようと試験機メーカーが新たな技術やサービスを提案した。安全技術の場合、品質確保はもちろん、世界各国の法規に適合させるため、さまざまな試験パターンでの緻密(ちみつ)な評価が欠かせない。リアルワールドでのデータが乏しい場合もあり、各社はシミュレーションの活用や屋内試験の高度化に取り組んでいる。

堀場製作所は、シャシダイナモメータとロボットドライバーを組み合わせた全自動ACC(アダプティング・クルーズ・コントロール)試験の実用化に取り組む。シャシダイナモメータ上の車両をロボットドライバーが運転するもので、前方の対象物「ターゲットシミュレーター」を前方車両と想定して試験を実施する。テストコースを使うより安上がりで済むだけでなく、過酷な環境下における長時間の評価試験にも対応できる。

Vボックスジャパン(小林達矢代表、横浜市港北区)は、英国の車両試験用計測機器メーカー、レースロジックが開発した全地球測位システム(GPS)を模した「インドア測位システム」を提案した。今は降雨や濃霧などの環境を屋内試験場で再現できるが、GPS信号の受信が不安定になり、測位精度などに支障が出ることが課題だった。

レースロジックのシステムは、GPSの代わりになるビーコン(受発信器)をトンネル内や屋内施設などに設置する。車両には受信機を取り付けて、ビーコンから出る信号をキャッチすることで、GPSと変わらない測位ができるという。

高齢人口の増加や職業運転手の不足などを背景に自動運転の社会実装が期待されている。車内での過ごし方が大きく変わる可能性がある半面、人命を守る重要性は変わらない。将来の「交通事故ゼロ社会」へ向け、自動車・部品メーカーは引き続き、技術や製品の開発に取り組む。

カテゴリー 展示会・講演会
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞4月8日掲載