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2022年6月22日

自動車メーカー カーボンニュートラル燃料、レースで知見積み上げ

自動車メーカーでカーボンニュートラル(温室効果ガス実質排出ゼロ)燃料の実用化に向けた動きが広がっている。カーボンニュートラル燃料を使用した車両でレースに参戦し、燃料メーカーとの連携強化によってエンジンの技術開発を進めているほか、社会受容性醸成のための情報発信にも取り組んでいる。

カーボンニュートラル燃料は現状ではコストや供給量などの課題があるが、既存のエンジンを活用できる利点がある。脱炭素化実現のための選択肢の一つと位置付け、普及を目指す。

カーボンニュートラル燃料には植物由来のバイオ燃料や大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収してつくる合成燃料などがある。

自動車メーカーはカーボンニュートラル燃料に適合するエンジンの開発を進めるため、モータースポーツの現場で技術を磨いている。今シーズンのスーパー耐久シリーズではトヨタ自動車とスバル、マツダ、日産自動車がカーボンニュートラル燃料を使用した車両で参戦した。

トヨタとスバルは同じ合成燃料を使用するが、搭載エンジンはトヨタが排気量1・4㍑ターボ、スバルが2・4㍑水平対向のNA(自然吸気)と異なる。両社は「お互いにレースでの試験結果をシェアし、次にどう生かすかを話し合っている」(トヨタ)と連携を深めている。

マツダは昨年のスーパー耐久最終戦でのスポット参戦に続き、今シーズンもユーグレナのバイオディーゼル燃料「サステオ」を使用した車両で参戦している。

日産は6月3~5日に開催された富士24時間レースに新型「ニッサンZ(日本名フェアレディZ)」をベースとした車両2台で参戦。うち1台は第2世代バイオ燃料を使用したもので、「カーボンニュートラル燃料に適合した競争力の高いエンジンの開発に生かす」(アシュワニ・グプタCOO)狙いがある。

燃料メーカーとの情報交換も重視している。トヨタは「燃料メーカーとキャッチボールをしながら『次のレースではこういう燃料を試そう』という話をシーズンの中で繰り返す」(トヨタ)ことで開発を促進している。

カーボンニュートラル達成に向けては、日本自動車工業会(自工会)が「電気自動車(EV)は唯一の手段ではない」と主張し、多様な選択肢で取り組む必要性を訴えている。

カーボンニュートラル燃料は、既存の内燃機関の構造を大幅に変更することなく、ガソリンや軽油からの置き換えが可能で、EVと同等のCO2排出量の削減効果を得られる。EV化で売り上げの減少が予想されるエンジン関連の部品メーカーにとっても雇用確保や事業継続につながる利点がある。

一方で、現状ではコストが高く、普及には課題がある。温暖化対策での有用性を社会に広めていくことも不可欠だ。

マツダはカーボンニュートラル燃料の有用性を発信するとともに、産学官コンソーシアムを通じて広島県内での次世代バイオ燃料の利用を継続している。

「企業や一般市民にカーボンニュートラル燃料の有用性を発信することで、結果的に需要拡大につなげたい」(マツダ)と考える。

カーボンニュートラル燃料の普及には自動車メーカーと燃料メーカーの連携強化による技術開発だけでなく、社会的受容性を醸成する取り組みも重要となりそうだ。

カテゴリー 社会貢献
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞6月8日掲載