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2022年5月17日

待機児童問題を自ら解決 京阪神の新車ディーラーが相次ぎ企業内保育所

働き方改革の重要性が一段と高まる中、京阪神で保育園を開設する新車ディーラーが増えている。各社は従業員が育児と仕事を両立できる職場づくりとともに、待機児童問題という課題解決への貢献を目指し、地域との結びつきを強めている。3地域・4社の取り組みを追った。

大阪トヨペット(横山昭一郎社長)が2019年4月に開設した「蓮美幼児学園京町堀ナーサリースクール」(大阪市西区)は、幼児保育事業者として多数の実績を持つ蓮美幼児学園との連携による「企業主導型保育施設」として誕生した。

0~5歳児を受け入れ定員は49人。開設後、乳幼児を抱える社員から「会社が主体の保育所なので安心感がある」「自治体から入園を断られたので助かった」などの評価があり、働きやすい環境づくりに寄与している。

西区は市内屈指の人口増加地域で、待機児童問題が深刻化している。同園は、こうした課題の解消を図り地域に貢献することをねらい、預かり保育の提携企業数を徐々に増やしてきた。口コミなどで評判が広がり、現在の提携企業数は20社を超えた。施設の見学者も多いという。

今年4月から従来は午前9時だった開園時間を30分前倒しした。大阪トヨペットの社員を1人、保育園と自社の橋渡し役として常駐させる取り組みも開始し、ニーズや状況に合わせた進化を続けている。

トヨタ新大阪販売ホールディングス(久保行央社長、大阪市淀川区)が本社内に開設した企業主導型保育施設「トヨタ新大阪花冠保育園」は、4月に開園から満3年を迎えた。従業員や周辺住民らを対象に最大19人(0~2歳児)の受け入れ体制を整えている。髙西利英園長は「自分らしく生きていけるように、全人格を尊重し、子どもたちが本来持つ生きる力を育んでいきたい」と保育理念を説明する。

保育園周辺は、大阪市内の中でも待機児童が非常に多い地域。このため、開園前から淀川区役所や地域の自治会と活発にコミュニケーションを図ってきた。そして開園4年目に入り、地域の信頼感がより高まったと手ごたえを示す。

定員のうち地域枠(9人)は19年7月以降、ほぼ埋まっており、淀川区役所経由で入園希望が寄せられることも多いという。同園の担当者は「地域の方からさまざまな場面で応援をいただいている」と地域連携でも成果を実感している。

神戸マツダ(橋本覚社長)は、地域での社会貢献として、神戸市垂水区に事業所内保育園(認可保育園)「サンク・トレゾール」を4月に開所した。待機児童の解消に取り組み、女性の活躍促進につなげるほか、自動車ディーラーの社会的な存在価値を高めていく考えという。

同園の立地エリアは商業施設が充実しベッドタウンとして栄える「学園南地区」で、子育て世代が多数、居住する。こうしたエリアに保育園を開所することで、働きやすく出産後の職場復帰もしやすい環境を作り、働き盛り世代を支援する狙い。

同社は地域社会の問題解決とともに、社内の働きやすい環境作りに積極的に取り組んでいる。今年3月には健康経営優良法人の大規模法人部門「ホワイト500」に5年連続で認定された。産業保健師の直接雇用や専属産業医として経験値の高い医師と契約し、社員の安全衛生面の管理も充実させるなど、生き生きと働ける環境作りに熱心だ。

京都トヨペットやネッツトヨタ京華などを運営するKTGホールディングス(西村勇社長)は19年4月、企業主導型の「みくるま保育園」を京都市南区に開設した。現在の定員数は30人で、保育士や子育て支援員などを自社で雇用し、内閣府の企業主導型保育事業助成を活用して保育事業に参入した。同保育園の開業により、グループの福利厚生を充実させ、従業員満足と企業価値を同時に向上することが狙いだ。

社員のための保育園として土曜に加えて日曜祝日も開園し、同社グループのスタッフが利用しやすい体制を整えた。開園時間も午前7時45分~午後7時30分と通常の保育園よりも長く、フルタイムの勤務者にも対応可能となっている。

施設内にはクルマのモチーフを多く採り入れ、自動車分野の企業が手掛ける保育園としての個性を打ち出した。さらに、ユニークなのは、京都府内の自動車関連会社にも門戸を開くこと。日本自動車販売協会連合会(自販連)京都府支部の加盟ディーラーを対象に連携企業枠を設け、同業他社の支援と地域貢献に役立てている。

カテゴリー 社会貢献
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞5月13日掲載