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2021年11月24日

踏切事故防止へAIや検知デバイス活用 各社で対応活発化

人や自動車、電動車いすユーザーなどを踏切事故から守る―。最新の人工知能(AI)や検知デバイスを活用し、踏切内での事故を防止するための取り組みが活発になっている。沖電気工業は、丸紅ネットワークソリューションズと西武鉄道が行う試験に参加。

IHIは三次元レーザレーダー式検知装置の高機能版の販売を始めた。いずれも踏切内の検知機能を高度化するもので、高齢者らの交通弱者が絡む踏切事故の未然防止につなげていく。

2021年度版の「交通安全白書」によると、踏切事故件数は減少傾向にある。それでも20年には全国で173件が発生。約2日に1件の割合で踏切事故が発生している状況だ。

鉄道事業者は踏切内に停まった車などの障害物を自動で検知し、異常を列車の運転士に伝える保安設備「踏切支障検知装置」を導入している。ただ、価格が高いため、すべての踏切に設置するのは難しい状況にある。また、事故発生時の状況確認には、カメラを別途設置しなければならないという課題もある。

こうした課題解決に向けて、沖電気は丸紅ネットワークと共同開発した監視カメラによる「踏切滞留AI監視システム」を活用する。カメラ映像をAIがリアルタイムに監視。踏切内に車両や人の滞留を検知した場合には既存の保安装置と連携して特殊信号発光機を作動させ、列車の運転士に異常を知らせる仕組みだ。

カメラを追加設置する必要はなく、遠隔地の司令所などからも現場の状況を確認することができる。

西武鉄道が12月14日から年度内に実施する踏切安全対策に関する導入試験に、同システムで参加する予定となっている。

一方、IHIは東日本旅客鉄道(JR東日本)と共同開発した「三次元レーザレーダ式踏切障害物検知装置(3DLR障検)」の高機能化で事故防止を進める。11月から高機能化3DLR障検の販売を始めている。

3DLR障検は、一般的な踏切支障物検知装置と比較して検知エリアが広く、小さな物体も検知できるなどの特徴を持つ。

高機能化版ではソフトウエアを改良。転倒した人などの検知を継続する「転倒検知機能」や、路面の凹凸に応じて立体的な検知エリアを設定できる「機能路面凹凸マップ機能」を追加。降雪・降雨時での過剰な検知を大幅に削減する「ノイズ除去機能」を強化した。

IHIは安全性の向上とより正確な検知を可能にした新製品により、高齢者や電動車いすユーザーなど交通弱者が絡む踏切事故の防止に寄与していく。

カテゴリー 交通安全
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞11月20日掲載