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2021年7月20日

EUが35年に内燃機関車販売禁止 日本メーカーも電動化前倒し不可避

欧州連合(EU)が2035年にハイブリッド車(HV)を含むガソリン車、ディーゼル車の新車(乗用車)の販売を禁止する政策を打ち出したことで欧州市場に進出している日本の自動車メーカーにも波紋が広がっている。

日系自動車各社は電気自動車(EV)の販売比率を段階的に引き上げる方針だが、内燃機関車の全廃を表明しているのは今のところはホンダだけ。そのホンダも40年までの目標で、対応を求められる。国内外で反発の声があり、政策が計画通りに実行されるかは不明だが、各社とも環境戦略の前倒しを迫られる見通しだ。

EUの欧州委員会は30年までに温室効果ガスの排出量を1990年比55%削減し、2050年にカーボンニュートラルを実現するための対策をとりまとめ、この中で35年以降、EU域内で販売できる乗用車の新車はゼロエミッション車のみとする。今後、加盟各国と欧州議会の承認を得て法制化される。

40年に販売する新車をEVと燃料電池車(FCV)に絞り込むことを今年4月に発表したばかりのホンダの三部敏宏社長は「米カルフォルニア州でもさらに厳しくなると聞いているが、世の中がカーボンニュートラルの達成に向けて想定通り進んでいるというのが実感」と、脱炭素化に向けた動きは想定の範囲との見方を示す。

対応策として三部社長は「達成手段はいろいろあるが(35年に温室効果ガス排出ゼロ車だと)先送りもできない状態で、今持っている技術でいくとEVとFCVで(対応していく)ということになる」と述べ、EVやFCVの開発を急ぐ姿勢を示す。

日本の自動車メーカーで欧州市場のシェアトップのトヨタ自動車は、欧州市場でのゼロエミッション車の比率を30年に40%にする計画を策定、当面、HVで二酸化炭素排出量を低減していく方針だった。

35年にHVも排除されるため、電動化戦略の見直しは必至だ。

35年から排ガスゼロ車が実行されると、エンジン関連部品を手がけているサプライヤーを中心に影響は広がる。日本の大手自動車部品メーカーの首脳はEUの政策について「想定していなかった。内容をきちんと把握できていないので、これからどう進むかを注視していく」と、緊張感を高める。

一方、EUの大胆な環境政策が日本にも波及する可能性がある。日本政府は50年にカーボンニュートラル社会の実現を目指して、35年までに内燃機関のみの新車(乗用車)販売禁止を打ち出しているが、HVやプラグインハイブリッド車(PHV)の販売は継続できるため、EUが打ち出した環境規制より緩い。

16日の閣議後の記者会見で梶山弘志経済産業相は「(EUの動向を)高い関心を持って注視しているが、日本での議論はこれから。(国として)主張すべきことは主張していく。自動車メーカーともこれまで通り話し合っていく」と、規制の前倒しの可能性も示唆した。

小泉進次郎環境相は「グローバルでビジネスを展開している日本企業への影響は多かれ少なかれあるだろう」とした上で、「脱炭素に向けた予算規模が欧米と比べて日本は圧倒的に少ない。(環境省として)脱炭素を促進する大型の予算が必要」と述べ、自動車メーカーなどの脱炭素化の取り組みを積極的に支援していく方針を示した。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞7月17日掲載