2019年7月25日
軽の電動車比率 じわり増加 日産・三菱自の参入が押し上げ
軽乗用車の電動車比率がじわりと伸びている。軽ハイブリッド車(HV)の1~6月新車販売台数は前年同期比8・8%増の19万1953台と、全国軽自動車協会連合会が16年に統計を開始して以来の最高を更新した。軽HVはこれまで、スズキとスズキからOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受けていたマツダのみが取り扱ってきたが、日産自動車と三菱自動車が今年参入したことで台数を押し上げた。一方、シェアトップのダイハツ工業は軽乗用車のHVは未投入で、ホンダは軽HVには否定的な姿勢だ。こうした状況もあり、乗用車に占めるHV比率は登録車の40・7%に対して、軽は24・3%にとどまる。
[軽HVけん引するスズキ] 軽HVのトップランナーであるスズキは、「スペーシア」「ワゴンR」「ハスラー」と量販車種にHVを展開する。独自技術のマイルドHV(MHV)は環境性能とコストのバランスを特徴とし、スズキの軽乗用車に占めるHV比率は68・0%に達している。日産と三菱自は3月に投入した新型「デイズ」と「eKワゴン/クロス」にリチウムイオンバッテリーを搭載したMHVを新たに設定した。直近6月のHV比率はデイズが36・7%、eKワゴン/クロスが43・3%となっている。
日産と三菱自が新型を投入した結果、1~6月軽乗用車販売のHV比率は2・0㌽上昇した。両新型車は3月から実績に加わったため、通年ではさらにHV比率は伸びる可能性が高い。
[首位ダイハツは搭載明言せず] 一方、首位のダイハツは軽HVの設定がなく、OEM供給先のトヨタ自動車やスバルも軽HVを取り扱っていない。ダイハツは7月発売の「タント」で新たなプラットフォーム「DNGA」を採用し、小型車も含めた今後のコンパクトカーのクルマづくりを示した。同社はDNGAで電動化を推進する方針を掲げているが、新型タントでは「すべて電動化が入っているかと言うとそこまでは入っていない」(田代正俊商品企画部チーフエンジニア)とHV搭載の明言を避けている。同社は05年に軽商用車の「ハイゼットカーゴハイブリッド」を発売したが、販売は振るわず10年に生産を中止した経緯がある。
車名別販売トップの「N―BOX」を筆頭に「Nシリーズ」を展開するホンダも、登録車で実走するHVを軽では搭載していない。本田技術研究所の松尾歩常務執行役員は「(軽の)HVでは回生がなかなかとりにくい」と否定的だ。実際、デイズのMHVと「N―WGN(ワゴン)」のWLTCモードの燃料消費率を比べるとガソリン車のNワゴンの方が省燃費だ。
軽HVに対するスタンスはメーカーによって分かれるが、その中でも将来的な普及が示唆されているのが電気自動車(EV)だ。本田技術研究所の松尾常務執行役員も「軽自動車に適用する電動化技術で最もふさわしいのはEVと考えている」と話し、ダイハツの松林淳専務執行役員も「あくまで私見だが、EVの市場ニーズとしては乗用よりも商用で市場性があるのでは」と指摘する。今後、軽の電動車比率はEVによって押し上げられる可能性も出てきた。
日刊自動車新聞7月22日掲載
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主催者 | 日刊自動車新聞社まとめ |
対象者 | 自動車業界 |