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2019年7月9日

機械式駐車場に自動入庫 自動運転車の実証実験に成功 新明和工業と群馬大

新明和工業と群馬大学は、自動運転車による機械式駐車設備への自動駐車実証実験に成功したと発表した。クルマと駐車設備が互いに通信し合いながら、駐車設備側が10㍉㍍単位の高精度で自動運転車を駐車位置に誘導。平面駐車場に比べて駐車が難しい機械式駐車場への自動入庫を駐車設備業界で初めて実証した。現状の技術精度では難しい自動駐車に成功したことで、国内に約310万台分ある機械式駐車設備の有効活用に期待が広がりそうだ。

[安全かつ高精度] 実証実験は、群馬大学の「次世代モビリティ社会実装研究センター」(CRANTS)に設置した検証用機械式駐車設備で行った。共同開発した「APPS(アドバンス・パイロット・パーキング・システム)」により、自動運転車(V)と機械式駐車設備(P)が通信でつながる「V2P」を確立。自動運転車とインフラである駐車設備が協調することで、所定のスペースにクルマを安全かつ高精度で誘導することに成功した。
APPSは、新開発の通信プロトコルとレーザースキャナ(LiDAR)を応用した車両位置特定アルゴリズムを特徴とする。これにより、クルマと駐車設備が双方向で通信を行い、機械式駐車設備側が自動運転車を駐車位置まで的確に誘導する。さらに、LiDARを応用した車両位置特定アルゴリズムによる点群データからクルマの位置を10㍉㍍単位で認識。クルマを安全に駐車位置まで誘導することで、平面駐車場より高い運転技術が求められる機械式駐車場への自動入庫を可能にした。手動運転車と自動運転車が混在する移行期の走行環境にあっても双方に対応できるとしている。
自動車メーカーによる自動運転技術の開発速度が加速する一方で、自動運転車とインフラ側との連携はほとんど進んでいないのが実情だ。現状の自動駐車機能の精度では、機械式駐車場への駐車は困難とされており、この問題を解決するために群馬大学と新明和工業は2017年12月から自動入庫を可能とするための駐車設備の共同開発に取り組んできた。
第一目標としたCRANTSの敷地内を走る自動運転車と、検証用に設けたエレベーター方式駐車設備の双方向通信による自動入庫が実現したこと受け、今後はタイプが異なる機械式駐車設備での駐車実証実験を行う予定。来年4月からは新明和工業の研究拠点(兵庫県宝塚市)に場所を移し、APPSと車路管制システムを組み合わせた実験を開始する。こうした検証データを積み上げながら、社会実装に向けた具体策を探る考えだ。

[国内に310万台分] 機械式駐車設備の安全対策は、センサーの設置などによってさまざまに施されているものの、入出庫時の人的操作ミスによる事故は絶えないのが現状だ。クルマの事故の約3割近くを平面や自走式の立体駐車場も含めた駐車場内が占めているとの調査結果もある。今回、自動運転車を安全かつ高精度に誘導し、駐車させる技術を確立したことで、無人状態での駐車に新たな可能性の道が開かれた。ドライバーなどの人に依存した操作が不要になれば、駐車場における人身事故の発生リスクを限りなく最小化することができる。
新明和工業は、エレベーター方式駐車設備などの大型の機械式駐車設備で国内シェアトップ。同社によると、機械式駐車設備は都市部を中心に国内に約310万台分(累計約57万基)が設置されているという。今後、自動運転車が本格的な普及期を迎えても、機械式駐車設備の有効利用は必須の課題であることから、今回の成功は機械式駐車設備の価値を高めることにつながるものと期待している。
③と④をくり返すフィードバック制御で駐車完了。実際の駐車位置と位置情報とのずれ幅は目標値の±10㍉㍍以内を実現

日刊自動車新聞7月6日掲載

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

新明和工業(株)、群馬大学

対象者 自動車業界
リンクサイト

新明和工業ニュースリリース

http://www.shinmaywa.co.jp/parking/news/product_news2019_0701_001125.html