2019年6月20日
北海道 検査・講習待ちで免許失効の恐れ 高齢者認知機能検査
75歳以上の運転者が免許更新する際、事前に行うことを義務付けている「認知機能検査」が、高齢運転者の増加で対応しきれなくなりつつある。北海道警察本部では同検査の民間委託先として自動車販売界に着目し、協力を打診したが、現段階ではディーラーにとってハードルの高い取り組みと受け止められている。地域の安全・安心なクルマ社会を守るために、これから官民一体で知恵を絞っていく必要がありそうだ。
[生活に不可欠] 高齢ドライバーによる悲惨な交通事故が連日のように報道されている。その背景のひとつは運転免許を所有する高齢者の増加が挙げられる。高齢者に免許の自主返納を促す動きも目立ってきたが、クルマが生活の足である北海道において、クルマ離れするのは容易なことではない。ローカルエリアの過疎化が進み、鉄道やバスなど公共交通は乏しくなるばかり。たとえ免許を返上したくても、マイカーがなければ買い物も病院も行けないというのが大都市以外に住む高齢者の本音だろう。
1964年の東京オリンピック以降、日本のモータリゼーションは大きく進展し、運転免許人口も急増していった。このころ免許を取得した世代が今、70代となり、これからさらに高齢運転者は増えていく。
道警本部交通部がまとめた札幌方面管轄(石狩、空知、後志、胆振、日高管内)における70歳以上の高齢運転者人口推移予想によると、今年が27万6444人で、令和10年(2028年)には33万6584人と現在の2割増になる。このうち認知機能検査の対象となる75歳以上は、今年の12万7324人に対し、令和10年では19万7163人と実に5割増。同じくその年に認知機能検査を受けると予想される人数も、比例して5割増になるとみている。
現在、認知機能検査は札幌方面管轄の場合、札幌運転免許試験場、同職員による室蘭や苫小牧など出張検査8カ所と各地区の自動車学校で受講できる。現状でも満杯気味で、時期や会場によっては申し込みから2~3カ月待ちになることがある。検査結果から2時間講習、3時間講習、あるいは診断書提出に分類されるが、その講習も場合によっては2~3カ月待ちになる。検査は免許期間満了日の6カ月前から受けられ、案内ハガキが届いてすぐ申し込めば問題はないが、のんびり構えていると検査や講習が受けられずに免許を失効する恐れもある。
[自社客限定ならCS向上策にも] このままでは高齢者の免許更新手続きの流れがパンクしかねないことから、道警本部は数多くの店舗を構えるディーラーで認知機能検査ができないかと考えて昨年11月、自販連札幌支部(中島好美支部長)に協力を打診。一部の会員ディーラーの拠点で模擬の認知機能検査を行い、実施可能か検証した。
結果、そのディーラーは「できない」という見解を示した。受講者が対応に不満を持つと、運転免許試験場や自動車学校とは違って店の看板やブランドに傷が付き、リスクが大きいという理由。さらに高齢ユーザーが多いとみられる軽自動車主体のディーラーなどにも働き掛けたが、賛同は得られなかった。
ただしディーラートップの中には「不特定多数の対応は無理だが、自社客に限定した取り組みならCS向上策になるかもしれない」という声もある。道警側は「対象を顧客に限定した認知機能検査の実施も可能」(交通部運転免許センター運転免許試験課)としている。現時点で、認知機能検査を自動車販売店に委託しているケースはなく、もし実現すれば全国初となる。
日刊自動車新聞6月17日掲載
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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主催者 | 日刊自動車新聞社まとめ |
開催地 | 北海道 |
対象者 | 一般,自動車業界 |