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自動車産業インフォメーション

2026年6月29日

見直し期限迫る「USMCA」、日本の自動車メーカーが注視 サプライチェーン再構築は困難 現状維持の可能性も鈍る投資判断

 米国、メキシコ、カナダの経済協定「USMCA」が、7月1日に発効後初となる見直し期限を迎える。トランプ米政権の保護主義的な圧力が強まる中、自動車の原産地規則について米国産部品比率を50%以上とするよう両国に求めるなど米国が強硬姿勢を示す。このため、見直しの合意は困難との見方が強く、現状の協定状況が当面は適用される可能性は高い。USMCAを前提にサプライチェーン(供給網)を構築してきた日本の自動車メーカーにとっては不確実性が続き、北米への新規投資は冷え込みそうだ。

 
 HVを中心に日本メーカーの北米販売は好調に推移するが…

 USMCAは北米自由貿易協定(NAFTA)の後継として2020年に発効した。6年ごとに見直し、3カ国が合意すれば16年延長し、合意しない場合は毎年見直しを行う。米国とメキシコは5~6月に協議を2回実施している。第3回の協議は7月20日の週が予定されており、1日時点で見直しが決定することはなさそうだ。

 見直しの争点となるのが、域内原産割合(RVC)比率の引き上げだ。RVCとは域内での原材料や加工費の割合を示し、乗用車とピックアップトラックの重要部品(カテゴリー1)の場合、20年の66%から現在は75%まで引き上げられている。米国メキシコ間の5月会合ではRCVを82%まで引き上げる提案がなされた。

 また、同会合では米国が新たに自国の原産割合導入を提案し、比率を50%とする考えを示した。これに対し、自動車メーカーの幹部は「米国産部品はコストが高いため、条件を満たすのは現実的ではない」と話す。日本貿易振興機構(JETRO)の担当者も「メキシコとカナダが認めるとは思えない」と述べ、交渉の先行きは見通しにくい。

 エンジンやトランスミッションなど北米原産であることを義務付けられている特定部品(コアシステム)に、電気自動車(EV)向け部品が追加される可能性もある。現在、EVの車載電池はコアシステムに該当するが、電動駆動ユニットのeアクスルなどが対象になると、EVのサプライチェーンを再構築する必要が出てきそうだ。

 足元では、トランプ政権による追加関税措置の影響でUSMCAの利用率は高まっている。JETROによると、米国の対メキシコ輸入に占めるUSMCA利用比率(金額ベース)は24年に49.6%だったが、25年には67.5%となった。26年1~4月では88.5%と急上昇している。

 別の自動車メーカー首脳は「3カ国の交渉はわれわれではどうすることもできない。状況を注視し続けるしかない」と漏らす。メキシコには日本の部品メーカーが約500社あると言われるが、低賃金なメキシコが北米の自動車生産を支えているのが現状で、USMCAを前提としないサプライチェーンを構築するのは容易ではない。ハイブリッド車(HV)を軸に日本メーカーの米国販売は好調に推移しているだけに、勢いを維持するために米国偏重のルール変更を見据えた投資に踏み切るべきか、難しい経営判断が求められそうだ。

 

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞6月29日掲載