2026年4月17日
中東問題でディーゼル車用エンジンオイル不足が深刻 カタール産ベースオイルが一因 ガソリン車用は供給続くが…
中東情勢の悪化により、エンジンオイルの在庫がひっ迫している。特に、品薄の状態になっているのが、ディーゼルエンジン(DE)用だ。石油元売り事業者の多くが受注を停止しており、整備事業者の中には業務に影響が出ているところもある。なぜ、DE用オイルの供給不足が深刻になっているのか。川下の整備現場から川上へとサプライチェーン(供給網)をさかのぼると、問題の全体像が見えてきた。
■まるで“エンジンオイルショック”
「来週にも在庫がなくなる可能性がある」と、関東のある整備事業者はため息をつく。「仲間内ではすでに在庫が切れた工場もある」というほど、大型車を中心に取り扱う整備工場で今、DE用オイルの在庫不足が深刻化している。
エンジンオイルは整備作業でもっとも使用する消耗品の一つ。在庫が切れれば整備業は成り立たない。加えて、長距離の都市間輸送を担ったり、物流量が拡大している小口配送を支える商用車はDEが多く、オイルの交換頻度が多くなる。こうした車両の整備ができなくなると、国内の経済活動に支障が出る懸念もある。
整備事業者にオイルを含めて補修部品を供給しているある部品商は、「DE用のエンジンオイルと、ギアオイルの受注は早い段階で規制がかかり、出荷停止の連絡も来た」と明かす。有力部品商の中村オートパーツ(東京都練馬区)の中村秀隆社長は、「オイルショックのような状況になりつつある」と苦笑いする。部品商に補修部品を卸す部品商社も「メーカーから満足に供給されない状況だ」としている。
■カタール産ベースオイルが一因
ここまでの状況に至った一因が、エンジンオイルの原材料となるベースオイルの供給量が減少したことだ。エンジンオイルは、主成分のベースオイルと酸化防止剤などの添加剤で構成される。添加剤の成分を変えることで、ガソリンエンジン(GE)用、DE用それぞれに最適なオイル性能にしている。
添加剤は、北米のメーカーから輸入することが多いため、現時点で大きな支障が出ていないもよう。しかし、一定の品質が求められる自動車のエンジンオイルに適する「グループIII」のベースオイルは国内で精製しておらず、韓国やカタールが主な輸入先となっている。
このうち、カタールにある英シェルの精製施設がイランからの攻撃を受け、出荷が全面的に停止した。潤滑油メーカーの関係者によると「正確な統計があるわけではないが、カタールからのベースオイルは日本の輸入量全体の2割程度を占めていたのではないか」としている。残り8割に相当する韓国からの輸入は継続しているものの、メーカーが供給制限をかけており、前年の実績以上は発注できない状況だ。
■DE用固有の要因も
ベースオイル供給量の減少はGE用にも共通する課題だが、DE用はさらに固有の要因が重なった。そもそもDE用はGE用に比べて需要が少ない。このため、「本来、特約店や商社はあまり在庫を持たない」(関係者)のが通例だ。加えて、「繁忙期の年度末にかけて一気に発注量を増やす会社が多い」(同)という商慣習もある。そのタイミングで今回の中東問題が発生。エンジンオイル流通の各段階で在庫を確保しようとする動きが生じ、需要が供給を上回った。「発注が急増し、元売り各社が受注を停止せざるを得ない状況になった」(同)としている。
■今後のシナリオは
4月16日現在、大手元売りはDE用オイルの受注を停止しているが、今後の見通しはどうか。
マイナスシナリオは中東問題の解決が長引くことで、韓国からのベースオイルの供給量が減少することだ。供給量次第では、DE用だけではなく、GE用の調達が困難になる可能性もある。
もっとも、韓国からの当面の輸入にはめどがついているという見方が一般的だ。受注を停止している元売りも、積み上がった受注残の解消が進めば、注文の受け付けを再開するとみられる。ただ、仮に今すぐ受注を再開したとしても、再び商社や特約店からの注文が集中すると、結果的に整備業界全体にエンジンオイルが行き届かなくなるリスクもある。関係者は「報道も含めて市場全体が冷静になる必要がある」と指摘している。
とはいえ、足元で事業継続が困難になっている整備事業者がいるのも事実。いかに必要な場所に、必要な量のエンジンオイルを行き届けるのか。車両の安全かつ適切な運行につなげるためにも、供給正常化に向けて一丸となって取り組む必要がありそうだ。
| 対象者 | 自動車業界 |
|---|











