2026年3月24日
〈会見概要〉自工会記者会見 新7つの課題はスピード感を持って 日本らしい生産性向上を
日本自動車工業会(自工会、佐藤恒治会長)は3月19日、くるまプラザ(東京都港区)で記者会見を開いた。主な質疑応答は次の通り。
―新体制で取り組む「新7つの課題」の進ちょくは
佐藤会長「どれも非常に大きなテーマとして、特定の企業が引っ張ればやれるというものではない。民間企業の力だけでもやりきれない、官民の連携が欠かせないテーマが非常に多い。各社の経営環境もそれぞれに違い、強みも違う中で『ゴール』のイメージを合わせるというところが非常に大事だと思っている。何をどこまでやるのか、その時間軸をどう置くのか、そのアライメント(調整)を少し時間をかけて、各社のことと腹落ちをさせながらやっていくことが非常に大事だ」
三部敏宏副会長「グローバル競争は日々、熾烈(しれつ)さを増すばかりだが、日本の自動車産業そのものが競争力を持って生き残れるかどうか、かなり瀬戸際の状況にいるという認識だ。その中で協調領域をいかにスピード感を持って進めていけるかがキーになる。一方で過去を振り返ると、自動車産業は縦割りの構造ができているが、過去の歴史を崩していかないと新しい競争力が生まれない。新体制で7つの課題にスピード感を持って進めていき、再び日本の自動車産業全体でグローバル競争力を高めていきたい」
―新7つの課題の一つに掲げる「人材基盤の強化」について具体的な取り組みは
佐藤会長「自動車産業の労働人口の減少の見通しはかなり厳しく、2030年代にはもう今から20%減ぐらいの状態になる。 日本で車を開発し、生産するには20%の生産性を上げないと、同じ状態を作れないという危機意識がある。そこに対し、AI(人工知能)やロボティクスなどの生産性向上に向けた日本らしいアプローチをしていくという議論はあるが、それをリードできる人材、どのようなスキル、どのようなメンバーがそこにエンゲージ(従事)すればその形を作れるのか、そういうところからまず議論をしている」
―中国メーカーの米国市場進出について、米トランプ大統領の発言をどう捉えているか
佐藤会長「自工会として一貫しているのは、日本の勝ち筋というのは『マルチパスウエイ』をしっかりと進めていくこと。いわゆる『対中国』という議論ではなく、日本がこの国に根差した自動車産業の貢献をどうやっていくか。米国の顧客が求める車をしっかり届けていくことに尽きる」
―中東情勢の悪化に伴う影響について
佐藤会長「中東に対し日本から80万台規模の車を売っている。経済規模(輸出額)でいうと2兆5000億円ぐらいあり重要な地域だ。船が入れない観点で物流の遅延の影響はすでに出始めている。例えば日本から中東への船便のリードタイムは50日ぐらいかかる。これを喜望峰回りにすると、100日ぐらいのリードタイムになるので輸送力が半分ぐらいなる。材料調達については、ナフサやアルミそれぞれ約7割が中東からの調達になり、影響が長引けば当然、材料調達上の課題というのは出てくる。どれぐらいこの状態が長引くかによって対応が変わってくるという段階だ」
―今年開催の「ジャパンモビリティショー」について
佐藤会長「今年は『ビズウィーク』ということで10月開催の『シーテック』との併催で開催を予定している。これまで多くのスタートアップとのコミュニケーションが進んで、参加企業の数も順調に伸びている。ビズウィークで目指している世界は、自動車を軸にいろいろな取り組みをつなげていくビジネスマッチングの場だが、特にバリューチェーンビジネスの価値創造が非常に重要になってくるので、そういうサービスや領域での連携性が重要になってくると思う」
―知能化の取り組みが重要になっている。自工会の連携をどう考えるか
佐藤会長「知能化のところは本当に難しく、競争領域であるという認識が現実にあるのは事実。 とはいえ、どの領域を競争、どの領域を協調とするのかという議論をもう少し進めて、一体感のある業界連携が取れたソフトウェア、あるいは知能化の動きを議論できると思う」
三部副会長「例えばロボットタクシー事業では、日本としてのルール作り、法整備を含めて自工会の中でまとまった動きをしなければならないと思う」
―高市政権が進めている重点17領域の投資について、出口戦略を担うのは自動車産業ではないか
佐藤会長「国が進めている戦略投資について、受け皿となる技術として何をやっていくべきか。出口戦略を担うのは、やはりモビリティだと思う。新7つの課題で意識しているのは『具体に落とす』『実際に社会実装していく』こと。 そこに意志を持った投資をしていって、循環させていく」
―米国の追加関税が導入されてから1年が経つ。今後の見通しについて
佐藤会長「経営的なインパクトは非常に大きい。 改めて政府に対しては未来志向の、 健全な税額に向けた努力を引き続きお願いしたい。一方、われわれもニューノーマル(新常態)として、新しい生産性向上に取り組まなければいけないことが明確になった。 それが7つの課題の取り組みの原点でもある」
設楽元文副会長「日本だけでなくASEAN(東南アジア諸国連合)も含めてインパクトがある。全世界的な地政学の対応を緻密に見て、リスクも含めたセットアップ(組み立て)をしようという認識だ。自工会全体の中でどういう取り組みができるか、未来に対しても具体的な対策をどう打っていくか議論している最中にある」
―米国の自工会とも連携を進めている。何ができるか
佐藤会長「われわれは長年にわたって米国と日本の両国に根差した事業を行い、投資をし、雇用を生み出してきた。その継続性とその規模の大きさについて改めて認識いただきたい。 日本の自動車産業の特徴は、プロジェクト投資が定期的に入る。 これは新型車あるいはモデルチェンジが入るタイミングで工場投資が入るので、安定的に現地で生産をしているというのは、定期的な投資が入ってくることになる。米国の自動車団体とも連携もしながら、特にカーボンニュートラリティーをどう考えていくのか、あるいはモビリティ社会と自動運転など社会システムとしてどのようなものを形成していくべきか。 こういった国際的な議論が必要となるので、そういった議論を連携しながら深めていきたい」
イヴァン・エスピノ―サ副会長「標準、基準、そして規則というものについて今後対処していかなければならない。特に北米においては、そういった要素を簡素化していく必要がある。 それにより競争力を強化し、維持していくことにつながる。例えば技術分野では、米側と協力できるのではないかと考えている。 自動運転であるとか、ホモロゲーション(認証)、型式証明などについてもシンプルにしていくことが重要なテーマである。関税問題については、プロセスを簡素化していくことも、もう一つ議論が必要なテーマではないかと考えている」
日刊自動車新聞3月24日掲載












