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2026年3月10日

ディーラー各社、車両の路上積み下ろし問題の対策進む 自走での新車輸送も

公道上で車両の荷役作業を行う「路上積み下ろし」を廃止する動きが、自動車の流通業界で広がっている。渋滞や交通事故の原因になりかねないためだ。これまでも店舗を大型化し、複数台を積載できるキャリアカーが敷地内で作業できるようにするなど対策を打つ販社が多かった。しかし、都市部など敷地を広げにくい店舗では、取れる施策に限りがあった。そこで、拠点近くに中継ヤードを設け、小ロットで適宜運ぶところや、新車を1台ずつ自走で回送する販社も出てきている。

大型キャリアカーは敷地内に駐車できない店舗が少なくない

 

路上積み下ろしは、自動車業界と陸送業界の長年の課題だ。車両輸送は大型のキャリアカーで複数台を運ぶのが効率的で、販社では納車前整備(PDI)センターなどから数台を積み込み、さまざまな拠点を回って必要な車両を降ろしていた。だが、間口や駐車スペースの問題で、大型のキャリアカーが乗り入れられない店舗もある。やむなく公道上で作業する場合も、渋滞を引き起こしたり、交通事故を誘発したりするリスクがあった。このため、国土交通省やディーラー・陸送関係の業界団体などで対策を議論してきた。

 

解決策の一つが、店舗敷地の大型化だ。実際、ここ数年、マツダやスバルの系列販社が大型拠点の出店を進めている背景には、この要因もある。十分な敷地を確保することで、キャリアカーを収容して作業できるようにした。ただ、都市部の拠点では近隣の敷地を確保できなかったり、ビル型の拠点などではそもそも大型のキャリアカーが出入りしにくかったりするケースもある。

 

そこで、トヨタモビリティ東京(TM東京、佐藤康彦社長、東京都港区)は物流会社と連携し、商圏内に複数の中継ヤードを開設。そこから自走で店舗に輸送する手法を採り入れている。数年前から進めてきたが、このほど全店舗が自走での輸送に対応できる体制となった。同社は19年に直営4社を統合して発足したが、店舗の統廃合の一環で余剰になった店舗などを活用し、PDIセンターとの中継ヤードに改めた。そこから各拠点に運ぶことで、自走距離をなるべく短くしているという。

 

スズキは全国の販売会社を対象に、26年4月にも路上積み下ろしを廃止するよう販社に働き掛けている。スズキの販売店も店舗の大型化を進めているが、他の系列と比べると比較的小さな拠点が多い。販社の地域や規模によって異なるが、中継ヤードの開設と、1、2台積みの小型キャリアカーなどを用いて路上作業を防ぐ考えだ。

 

もっとも、小さなキャリアカーや自走で店舗へ車両を輸送する方法は、一気に複数店舗を回れる大型のキャリアカーを使う場合と比べて効率が下がる。営業拠点に近い場所にヤードを開設する費用負担も重く、都内のあるディーラーの社長は「資金力が潤沢な販社でなければ難しい」と指摘する。場合によっては、メーカー系列や販社の垣根を超えた輸送網を構築することも必要になりそうだ。

日刊自動車新聞3月10日掲載