2026年2月20日
〈会見概要〉日本自動車工業会、「新7つの課題」説明会
日本自動車工業会(自工会)は2月19日、「新7つの課題」などの活動進捗について説明を都内で開いた。主な質疑応答は次の通り。
―2026年の春季労使交渉(春闘)がスタートした。「新7つの課題」の人材基盤強化にいかにつなげていくか
佐藤恒治会長(トヨタ自動車社長)「米国関税の問題など中長期的な収益の見通しを考慮した要求となっている。自動車業界は長期に雇用の安定と成長の分配の循環を生んでいると理解しており、そこの根っこにあるのは労使の話し合いだと思う。『人への投資』と言うが、どの領域にどう投資していくか。やりがい、働きがい、あるいは生産性をいかに上げるかが重要になってくる。自動車はサプライチェーン(供給網)が非常に広く深い産業構造となっており、産業全体でどうやって賃上げのモメンタムをつくっていくか。今、われわれがしっかりとやらないといけないのは適正取引。ティア(階層)の深い会社で良いものをつくってもらい、それをしっかり評価して、価格で反映し、その取り引きの中で還流させていく」
―高市政権が新たな産業クラスターをつくる成長戦略を打ち出す。自動車産業は何ができるか
佐藤会長「高市政権の掲げる重点17領域は多岐にわたっているように見えるが、自動車産業から見ると例えば自動運転では人工知能(AI)や量子技術、あるいは通信、半導体といった要素がその中に複合的に入っている。われわれが目指すべきモビリティ社会を実現していく上で、そういう重点領域に対してしっかりとコミットして取り組むということが大事だ」
―国際競争力を高めるには個社対応に限界がある。「協調」と「競争」をどう進めて行くか
毛籠勝弘理事(マツダ社長)「例えば中国のスケール感とスピードに対してわれわれは戦えるのか。これまでのプロセスや個社の最適なエコシステムをブラッシュアップするだけでは国際競争力の観点では十分ではない。一方で、われわれは非常に多くの優秀なサプライチェーンを持っていて、すり合わせの技術もある。 こういった強みをさらに一段高いレベルに上げていく」
三部敏宏副会長(ホンダ社長)「自動運転で言うと米国や中国で自動運転タクシー事業が始まっている段階だが、日本では実証レベルにある。自動運転の中身は日々進化していて、今はAIに学習させれば勝手に判断できるが、学習させるには莫大な計算能力が必要になり、開発コストは兆単位となる。技術の進化と開発コストを含めて、競争領域と協調領域をどう分けるか。最終的に社会交通システムの一つになるとすると、個社でバラバラというのは多分ない。新しい交通システムをつくっていくのは協調領域ということ」
―新7つの課題の一つのプロジェクトに掲げる共同物流の標準プラットフォーム構想とは
佐藤会長「物流のデジタルトランスフォーメーション(DX)はまずやっていこうというコンセンサスはできている。やろうとした時にデータの共有がネックとなる。完成車物流は『行きは良い良い』で、帰りは荷物がない状態。相互連携できるようになると、各工場の位置、持っていく販売店の位置、どこにどれだけのトラックが行くかが分かれば効率的に積載率を上げられるはず」
―競争力を高めていく上で、国内投資の方向性は
佐藤会長「自動車産業は多方面の技術を包括した複合的な産業であり、新しい技術領域に対する研究開発投資は具体のプロジェクトを持って国内で取り組むスキームをつくるべきだと思う。7つの課題に代表されるように、社会実装を視野に大きなプロジェクトを立てることで具体的な投資を引き出していく。一方で、ティアの深い自動車産業では、ある領域に特化して事業をやっている会社がたくさんあり、単純に老朽化更新を進めてしまうと、産業構造の生産性向上にはつながらない。自動車産業が『マルチパスウェイ(全方位)』でやると言っても、例えば『エンジンはどうやって進化していくのか』といった解像度を上げていかないと、ティアの深い会社はどこに戦略投資していいか決められない。強みである広く深いサプライチェーンを維持するためのトランジション(移行)をどうやっていくのか、日本自動車部品工業会(部工会)と一緒にやっていくべき」
―サプライチェーンリスクに自工会としてどう対応していくか
佐藤会長「安定した生産を実現するためには安定した調達が企業活動の大前提となる。中国の輸出規制に関しては、部工会と連携しながらサプライチェーンの情報共有の仕組みをつくり、国との連携を図っていく。 これは競争法に抵触するリスクもあるので、個社個社のフィードバックをするとはなっていない。 しかも調達するのは自動車メーカーでなくティア1以降のサプライチェーンで行っているので、この情報の可視化というのはものすごくデリケートなことだ。 そのため、経産省をピボット(軸)にしながら、各社がサプライチェーン情報を見えるように管理をしっかりとやっていこうと。安定調達という観点からは、希少元素を使わない材料への転換を技術的に進めていく」
―働き方について、製造現場では祝日に働くのが一般的だが休みをどう増やしていくか
佐藤会長「日本のものづくりの原点は人の力だと思っている。生産性だけに軸を置いた労働カレンダーではなく、働き方が多様になっている社会での生き方と両立できる環境づくりを産業としてやっていかないといけない。休みを増やしていくのは生産性向上の議論とセットで進んでいく」
| 対象者 | 自動車業界 |
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日刊自動車新聞2月20日掲載












