2026年2月19日
連載「変流 自動車メーカー決算を読む」(2)翻弄されるサプライチェーン
各社の通期見通しにおける最大の不確実要素はサプライチェーン(供給網)だ。半導体供給問題は2025年秋から長期化し、ホンダは年明けも工場停止に追い込まれた。各社は仕入れ先と連携して半導体確保に奔走してきたが、レアアースの輸出規制や半導体メモリー価格の高騰といった新たな火種も浮上。先行きの不透明感は一段と増している。在庫の積み増しや調達先の多様化など各社が取り組みを進める一方で、こうした活動は個社では限界もある。産業全体で安定した供給網をどう築くかが日本メーカーの競争力を左右する。
■長期化した半導体供給問題
半導体供給問題が顕在化したのは25年10月末。オランダに本社を置く中国系半導体メーカーのネクスペリアによる出荷停止を受け、ホンダはメキシコの四輪生産を一時停止し、米国やカナダでも生産調整を余儀なくされた。一旦、収束の兆しも見えたが、12月末には中国の合弁会社「広汽本田汽車」の3工場を約1カ月停止する事態になった。日本でも埼玉製作所(埼玉県寄居町)と鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)を1月5、6日に停止し、7~9日は減産した。貝原典也副社長は「在庫の適正化などを進めてきたが、一部で情報開示が十分でないサプライヤーもあり、依存の実態があった」と振り返る。
生産停止や減産の影響により、25年4~9月は営業利益で1500億円の押し下げ要因を見込んだが、4~12月期でも影響額は据え置いた。国内と中国では減産分を今期中に挽回する計画だ。
■供給確保できるかが最大のリスク
半導体に加えて、新たな懸念材料も浮かび上がる。日中関係の悪化を背景としたレアアース(希土類)の輸出規制と、人工知能(AI)向けデータセンター投資拡大に伴う半導体メモリー価格の高騰だ。足元で生産や業績への影響はみられないが、各社は在庫確保など安定生産に向けて対応を急ぐ。
レアアースは電動車用モーターなどに用いられており、規制が長期化すればHVが好調な日本メーカーの業績にも影響しかねない。三菱自動車は26年半ばまでの必要量を確保。ホンダは「輸出許可申請を着実に進め、(調達分は)出ているものの、予定通りに安定して出てきている状況ではない」(貝原副社長)と説明し、動向を注視する。
先行きが不透明な中で、短期的な在庫対応には限界があり、レアアースフリー技術の開発など依存度低減への取り組みも加速していく必要がある。
半導体メモリーの一種である「DRAM」の価格も上昇している。「価格面だけでなく、供給を確保できるかが最大のリスク」(スバルの戸田真介常務執行役員CFO)といった懸念の声も上がる。各社は代替設計や調達先の分散を進め、生産への影響を最小限にとどめる考えだ。
在庫の積み増しや代替策など個社努力は不可欠だが、構造的な課題の解決にはならない。安定調達の確立には、日本自動車工業会(自工会、佐藤恒治会長)などによる横断的な取り組みが不可欠となる。自工会では、半導体不足やレアアース規制などを踏まえ、今年1月に発足した新体制では、資源調達への対応力の強化を打ち出した。
供給網の強靱化は、企業戦略ではなく、産業全体で取り組む政策に変化している。業界を横断した安定的な供給網の構築が、日本の自動車産業の持続可能な競争力に直結する。
| 対象者 | 自動車業界 |
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日刊自動車新聞2月19日掲載












