INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2026年2月18日

連載「変流 自動車メーカー決算を読む」(1) “ドル箱”米国市場の光と影

2026年3月期の国内自動車メーカーの米国関税影響は、7社合計で約2兆5000億円になりそうだ。各社が関税対策を講じたことで期初の見通しに対しては約1500億円圧縮することができそうだが、それでもなお業績への影響は甚大だ。一方で関税の“震源地”である米国市場の販売は堅調に推移しており、特に国内メーカーが強みを持つハイブリッド車(HV)が販売を伸ばしている。関税対策と販売施策を両輪とする米国戦略が自動車メーカーの業績を左右する局面にある。

トヨタ自動車は、通期業績における関税影響を1兆4500億円と予想する。トヨタは米国の旺盛な新車需要に応えるために、国内からの米国輸出を増やしている。25年4~12月期の米国販売台数は2桁増となり、特にHVが台数を伸ばす。一方で北米事業の営業損益は56億円の赤字に転落し、関税影響が大きくのしかかる。

リストラ策を進める日産自動車も、関税影響が経営再建の足を引っ張る。ジェレミー・パパン最高財務責任者(CFO)は「これまでの四半期と同様に関税の影響は最大のマイナス要因だ」と述べ、通期の関税影響は2750億円と見積る。イヴァン・エスピノ―サ社長は「米国生産モデルを優先的に(販売)促進する」と話し、関税影響を緩和する取り組みを進める。

米国販売比率が高いスバルは関税影響が業績を直撃する。通期の関税影響額は2290億円と、税率引き下げタイミングが想定より遅かったことや、現地調達部品や補修部品への関税影響などを加味したことで当初より増える見通しだ。2000億円を計画していた営業利益は1300億円に下方修正した。戸田真介CFOは「追加要因を読むことができなかった」と無念さをにじませる。

マツダも米国販売比率が高く、25年4~12月期の営業損失は5年ぶりの赤字に転落した。一方、メキシコ工場で生産する「CX-30」の米国向け輸出を抑制しつつ、米国生産の「CX-50」を増産するなど関税を抑え込む取り組みを進めており、関税影響は期初見通しより708億円圧縮し1625億円と予想する。毛籠勝弘社長は「関税影響という甚大なインパクトにひるまず、自らコントロールできる領域に着目し、踏み込んでやっている」と述べ、通期で黒字転換を見込む。

ホンダも米国における部品の現地調達を進めるなどし、関税影響を期初の見通しから1400億円圧縮する。また、トヨタと同様に販売が好調なHVはガソリン車に比べてインセンティブ(販売奨励金)が低く抑えられ利益を押し上げる。一方、藤村英司執行役常務は「他社もHVを入れてきており、これからインセンティブを増やさなければならない」と警戒する。ガソリン車はHVに比べてインセンティブが高くなるが、関税影響が小さいことから、HVとの販売構成を調整しながら収益拡大を狙う

トランプ政権の電気自動車(EV)推進施策の廃止に伴う事業への影響も大きい。ホンダはEVの商品計画の目論見が大きく狂い、一過性損失を計上するなど四輪事業の営業損失は赤字となる見通しだ。貝原典也副社長は「今後EVはかなり低いレベルで推移する」と話し、HV強化に軸足を移す。

関税とEV減速の逆風が吹く中でも、HVを中心に需要が旺盛な米国市場は国内メーカーにとって“ドル箱”であることは変わりない。スバルの戸田CFOは「関税影響は恒久化する前提で、異次元の原価低減やバリューチェーン収益の拡大などによって関税を打ち返す」と話す。米国事業のてこ入れは、盤石な経営基盤を築くための試金石となる。

対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞 2月18日掲載