2026年2月2日
〈トップインタビュー2026〉東海理化、二之夕裕美社長 進・深・新の3つの意味でモノづくりを「シン化」

ドローン向けビジネスやeスポーツブランド「ゼンエイム」など、脱自動車の取り組みを加速させる東海理化。二之夕裕美社長は、新領域進出の狙いとして「開発のスピードアップ」を挙げ、既存事業への還元を期待する。“新しい風”をもたらした同社の挑戦は、2030年に向けて成果を刈り取るフェーズに移行しつつある。
■重点地域のインド トヨタ自動車以外への採用強化
―昨年5月に2030年を最終年度とする中期経営計画を発表した。スイッチをはじめとする既存事業の市場環境や次世代品の展望は
「ユーロNCAP(新車安全性評価プログラム)の提言を受け、(タッチ式の)ソフトスイッチが必ずしも良いわけではないという流れが出てきた。従来の物理スイッチの開発・生産をやめる企業もあり、当社への引き合いが多くなっている。ハードスイッチ回帰の流れの中で、2030年の見通しも微減で収まるとみている」
「次世代品のうち、シートベルトでは軽自動車をターゲットにした高性能モデルと、エアバッグと一体化したラップエアバッグの2つに力を入れている。後者は『アルファード』のようなシートの可動域が大きい車両で需要が期待できる。また、シフトバイワイヤ化に対応したシフトレバーや内装パネルと同化したヒドゥンスイッチ(表から見えないスイッチ)の採用拡大も進めている」
―重点地域の一つとしてインドを掲げる
「日系自動車メーカーに加え、地場や韓国系も台数が伸びている。競争も激化しており、トヨタ向けのビジネスでインドに進出した当社は、他メーカーにおいては新参者だ。生産台数の増加を背景に分散発注をするようになり、当社にもチャンスが出てきた。(インド事業で合弁を組む)ウノ・ミンダグループとも連携し、商品力と供給力を強みとして打ち出していく」
■汎用モジュールで生産をリアルタイムに変更
―日系自動車メーカーが中国市場で苦戦する中、トヨタは販売台数を伸ばしている。自社の今後の展開は
「ローカル部品メーカーからの調達も増えており、バラ色とは言えないだろう。日本と同じ製品を現地で作れるとは思っていない。その中で、安全面で実績のあるシートベルトや、ステアリング・スイッチ、静電スイッチといった新しい製品は当社に優位性がある。トヨタが新たに建設する上海工場にも売り込みをかけていく」
―ローカルの自動車メーカーとの取引拡大の考えは
「考えていない。補給部品の対応を考えると、長期的な取引を前提としていかなければできない。自動車メーカーと一緒に成長するという考えを共有できるのは日系メーカーだ。リソースの面でもローカルの対応は難しい」
―汎用モジュールを組み合わせた生産ラインの導入状況は
「モデルチェンジのタイミングで、協力会社を含め導入していく方針だ。電動化の過渡期においては、製品の種類や量が変動するため、車種をまたいで生産をリアルタイムに変更できるフレキシブル・ラインのメリットは大きい。ただ、自動化するには部品点数を減らさなければ成り立たず、設計から大きく変える必要がある。自動化の難易度が高いシートベルトでも、導入を目指していく」
―新中計では自動車以外の新領域のスケールアップを掲げる。脱自動車を目指す狙いは
「一番は開発スピードの違いにある。自動車のモデルチェンジが現状6年に1度で、それに合わせて開発する一方で、ゲーミングキーボードは2年に1度。さらに作った製品は自分でユーザーに売らなければならず、売る意味が異なる。顧客の反応がダイレクトに来るため、判断も早くなる。企画書やハンコにとらわれず、モノを先に作って提案するようになった。新しい風を自動車にも反映していきたい」
―自動車事業でもデジタルの活用による開発のスピードアップに力を入れてきた
「開発のリードタイムが短くなれば、同じリソースでたくさんの仕事が取れるようになる。シミュレーターや人工知能(AI)の活用の取り組みも方向性が整ってきた。モノづくりを進・深・新の3つの意味でシン化させる」
〈プロフィル〉にのゆ・ひろよし 1984年名古屋工業大学工学部卒、トヨタ自動車入社。2011年生産管理部生産調査室長、15年グローバル生産推進センター部長、17年常務役員、生産企画本部長、18年車両系工場担当、20年東海理化副社長などを経て現職。1962年1月生まれ、64歳。三重県出身。
| 対象者 | 自動車業界 |
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日刊自動車新聞2月2日掲載











