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2026年1月23日

〈三菱ふそうと鴻海の合弁の狙い〉EVの「黒子」と競争力強化へ 「国産」前面に出し中国に対抗

三菱ふそうトラック・バスは1月22日、台湾の鴻海精密工業(フォックスコン)とバス事業の共同出資会社設立について会見を開き、鴻海の電気バス(EVバス)がベースの車両を2027年中に国内で受注を始める計画であることを明らかにした。都市部を中心にEVバスへの置き換えが始まりつつあるが、開発にはバス特有の難しさがある。三菱ふそうは車両を素早く供給するため、鴻海と組んだ。


手を合わせる三菱ふそうのデッペンCEO(写真左)と高羅バス事業本部長(中央)、鴻海のEV事業の関CSO


鴻海の路線バス「モデルT」は22年から量産が始まった(鴻海の「X」公式アカウントから)

新会社は26年後半に設立する。まずは鴻海の「モデルT」ベースの大型路線バスから展開する。鴻海はモデルTを22年から量産しており、台湾市内では走行実績もある。国内事業者向けに仕様を変更するという。「台湾とは違うスペックを準備している。ふそうの目線で、これまでのお客さんへの見識に基づくもの」(三菱ふそうの高羅克人バス事業本部長)に仕立てる考えだ。小型バス「モデルU」ベースの車両も将来、検討していく。

■個別のニーズに応える難しさ

「単独で開発するには時間も投資も必要だった。市場に早く出す上で、協力関係を拡大する」。三菱ふそうのカール・デッペンCEO(最高経営責任者)は、鴻海との新会社設立の背景を話した。

経済産業省は2040年までに商用車を100%電動化する方針で、日本バス協会も30年までに国内にEVバスを1万台導入する目標がある。都市部を中心に導入が始まりつつある。ただ、国産車は現在、24年5月に発売したいすゞ自動車「エルガEV」のみ。デッペンCEOは日野自動車との経営統合会見(昨年6月)でも「まだふそうにはないが、EVバスの投入は重要だ」と話していた。

ただ、事業性にはEVトラック以上に難しさがある。国土交通省の統計では、乗合バスの事業者は全国に約2400社存在し、9割以上は資本金1億円以下の中小企業だ(22年度末時点)。さらに座席レイアウトからスイッチ類、運賃箱、外装塗装まで、各社ごとに仕様が異なる。そのため受注生産して架装を施す必要がある。鴻海のEV事業の関潤最高戦略責任者(CSO)は「バス事業の一番の辛さはトラックの10分の1以下のボリュームだ。投資をどう償却するかが難しい」と話す。「(自動車メーカーが)作りにくいところからあえて作って提供できる」と強みをアピールする。

■日本製の信頼性を全面に

昨年の大阪・関西万博では中国製のEVバスが200台超導入された。関係者によると国産EVバスの供給が間に合わなかった結果だという。しかし、「自動運転は制御系が脆弱だった」(国内自動運転事業関係者)といい、運行中の事故や不具合も相次いだ。

足下では日中関係が悪化、電池など部品を含めて調達リスクがあることも事実だ。

新会社のCEOに就任する三菱ふそうの高羅バス事業本部長は「国産であることは非常に大きな強みだ。型式認証を取り、日本の商品であることを全面に出したい」と話す。

新会社では国内への投入後、海外展開も視野に入れている。新規市場も開拓していく。ディーゼルエンジンを搭載する既存の観光バス、路線バス、小型バスも市場特性に合わせて進化させていく。高羅バス事業本部長は「富山での製造を続ける。バス専業のマザー工場として大きく生まれ変わるチャンスだ」と前を向く。

「ふそう」ブランドは1932年、量産ガソリンエンジンバスに名付けられたことが起源だ。EVの知識が豊富な鴻海とともに、新会社で事業をより強固にしていく考えだ。

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞1月23日掲載