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自動車産業インフォメーション

2026年1月22日

1月から取適法施行、従来の商慣行は通用しない 「認識」徹底進める自動車業界

 今年1月1日に中小受託取引適正化法(取適法)が施行された。改正前の下請代金支払遅延等防止法(下請法)と比べ、適用対象となる取引や事業者の範囲が拡大したのが特徴だ。自動車業界では昨年、下請法違反で勧告や指導を受ける事案が多発し、中小企業庁(中企庁)と公正取引委員会(公取委)が「自動車業界への監視を強化する」と警告する事態にまで至った。従来の商慣行を改め、業界全体に取引適正化の認識を再度、浸透させる必要がある。

 下請法が改正され、1日から取適法が新たに施行された。取適法では、発注企業が協議に応じず一方的に代金を決定すること、手形払いなどが禁止行為として新たに盛り込まれた。また、下請法で使われていた「親事業者・下請事業者」という呼び方は、上下関係を連想させないように「委託事業者・中小受託事業者」に変更した。

 近年、自動車業界では下請法違反の事例が多発していた。製造分野では、下請け企業に金型を無償で保管させるケースが相次いで発覚。三菱ふそうトラック・バス、トヨタ自動車東日本(TMEJ、石川洋之社長、宮城県大衡村)、東京ラヂエーター製造、中央発條、愛知機械工業(和田民世社長、名古屋市熱田区)、フタバ九州(波切稔和代表取締役、福岡県直方市)、カヤバなどが中企庁から再発防止を求める勧告を受けた。該当部品を長期間、発注しないにも関わらず、下請け企業に対して金型を無償で保管させるのは、違反行為に当たる。中企庁担当者は「長年の商慣習で発注側は『問題はない』と捉えているケースが多かった。受注企業側は指摘することによって、仕事が減ることを懸念し、費用を請求しづらい立場にある」と解説する。

 この状況を危惧し、昨年末には中企庁と公取委が、日本自動車工業会(自工会、佐藤恒治会長)、日本自動車部品工業会(部工会、茅本隆司会長)、日本自動車車体工業会(車工会、冨山隆会長)の3団体に対し、取適法の周知徹底と違反行為の未然防止、法令違反を誘発する商慣習の見直しを要請した。政府が特定の業界に対し、このような要請を行うのは珍しいケースだ。金型の無償保管に加え、部品の量産終了後も量産品を前提に、一方的に発注企業が単価を決める「買いたたき」行為などに関しても、禁止事項として明記した。

 また、自動車ディーラーでも違反事例が相次いでいる。中企庁と公取委が昨年4~12月に実施した自動車ディーラーと車体整備事業者の間の取引における下請法違反被疑行為調査では、ディーラー2社に勧告(公表済み)、160社に指導を行った。勧告を受けたのは、スズキ自販大分(屋代進也社長、大分市)と福岡ダイハツ(内山邦彦社長、福岡市博多区)で、下請けの板金事業者に代車を無償提供させたとして再発防止を求めた。

 違反事例としては、価格を明記せずに修理を依頼する「書面の不交付・記載不備」が最も多く138社だった。このほか、期日までに支払いを行わない「支払遅延」や、協議を行わず一方的に価格を据え置く買いたたき事例などが見られた。ディーラーと車体整備事業者間の取引では、書類を介さず、口頭で発注するケースも多く、このような商慣習が違反につながっていると見られる。

 取適法が施行されたことで、違反行為の対象が広がり、法令順守の徹底がこれまで以上に求められることになる。自動車関連企業は改めて、自社の取引内容を見返し、従来の慣習にとらわれない適切な取引環境を構築する必要がある。

対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞 1月22日掲載