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2025年12月18日

連載「JAMA 大学キャンパス出張授業2025」ヤマハ発動機 「モノづくりの喜び」を原動力に~今日よりもっと素晴らしい海を、未来へ~

 ヤマハ発動機の井端俊彰・上席執行役員(マリン事業本部長)は10月24日、横浜国立大学(横浜市保土ケ谷区)で「『モノづくりの喜び』を原動力に、今日よりもっと素晴らしい海を、未来へ。」をテーマに講演した。約200人の学生にマリン事業の取り組みを紹介したほか、若手エンジニア2人も自身のキャリア形成やモノづくりの面白さについて語った。

 井端氏は冒頭、自社の成り立ちとして楽器メーカーのヤマハから1955年に二輪車事業を分離・独立して設立された経緯を説明。今年、創立70周年を迎え「今ではオートバイだけでなく、ボート船外機や電動アシスト自転車、産業ロボット、電動車いすなどさまざまな事業を展開している」と話した。

 「感動創造企業」という世界の人々に新たな感動と豊かな生活を提供する企業理念に触れつつ「エンジンの回転数を上げるように、人々を常にワクワクさせる提案をしていきたい」と訴えた。

 世界180以上の国・地域でグローバルにビジネスを展開し、売上比率では海外のウエートが9割以上を占めているなどと指摘。2024年度の連結売上収益が2兆5700億円に上り「地域別ではアジア諸国の比率が高く、欧米が続く。事業別ではランドモビリティ(オートバイなど陸上の乗り物)の比率が6割以上で、これに続くのが2割に当たる船外機・ボートなどのマリン事業だ」と解説した。

 担当のマリン事業に関し、50年に向けた長期ビジョン「信頼性と豊かなマリンライフ 海の価値をさらに高める事業へ」を紹介。その上で、連結営業利益ではマリン事業が約5割と稼ぎ頭になっており、主力商品の船外機は世界シェア首位となっていると強調した。

 製造拠点として、日本とブラジルの計3工場を紹介。静岡県と熊本県の拠点で全体の9割以上の船外機を製造しているといい「拠点が違ってもヤマハ品質をしっかり守り、お客さまさまに良いものを使ってもらえるように各工場で日々改善しながらモノづくりを行っている」と語った。

 マリン事業活動の今後については「ヤマハのコアビジネスとして、これからも手を緩めることなく取り組む。土台となるのは、これまで培ってきた既存ビジネスであり、船外機、ボートなどの開発は強力に進める。電動だけでなく条件に合わせ、さまざまなソリューションによってカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を達成するなど新価値の創出が次のチャレンジだ」と話した。

 学生との主な質疑応答は次の通り。

 ―水素の活用では燃料電池もあるが、水素エンジン開発に取り組む利点は

 技術・研究本部の平本成実氏「実際、燃料電池の方が効率は良いが、馬力を出すという点ではエンジンには勝てない。モーターも大きくなる。ガソリンエンジンをつくっている部品メーカーから言われるのは、燃料電池になると、従来つくっていた部品の行き先がなくなるということ。エンジンは今までの部品を使いながら燃料を変えるだけでカーボンニュートラルになる」

 井端氏「自動車業界でも電動化や燃料電池化すれば、今、設計・生産している内燃機関を変えないといけない。雇用とかいろいろな問題に波及してしまう。内燃機関でカーボンニュートラルを目指せればやろう、電動化でメリットがあればやろうと考えている。時代が過渡期になっており、われわれもどこに進むか難しい状況にある」

マリン事業の取り組みを紹介する井端氏

会場には水上オートバイも展示した

 

 

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞12月18日掲載