2025年12月10日
〈ターゲット2030 持続可能な未来へ〉東海北陸の自動車リサイクル事業者、環境保全活動に力
東海北陸地方に拠点を置く自動車リサイクル企業・団体が、海岸清掃などの環境保全活動に力を入れている。瀬戸内海の離島や四国の海岸などで、植樹やごみの回収を行っている。加えて、地域住民など向けに、自動車リサイクルを紹介する取り組みも広がっている。2025年も自然災害が相次ぐなど、異常気象を実感する機会が多くあった。一層の環境対策が求められる中、それぞれの事業者や団体は率先して活動に取り組み、情報も発信していくことで、リサイクルの関心を高める機運の醸成につなげる考えだ。
石川県金沢市に本部を置く日本トラックリファインパーツ協会(JTP、髙橋稔代表理事)は25年から、NGP日本自動車リサイクル事業協同組合(小林信夫理事長)が香川県の豊島で取り組む環境保全活動に加わっている。同島では、過去に自動車シュレッダーダスト(ASR)をはじめとする産業廃棄物の不法投棄があり、環境汚染につながった。JTPは、6月と11月の2度にわたって役員らが同島で植樹活動などを実施。住民から公害の歴史も学んだ。初めて豊島に足を運んだ髙橋代表理事は「現地に行かないと分からないことがあると痛感した」とし、今後も活動を継続していく考えだ。
ビッグウェーブ(服部厚司代表、愛知県あま市)も、自然を守る活動に取り組んでいる。特に力を入れているのが、海岸に散乱したビニール袋やペットボトルなどの回収だ。魚が餌と勘違いして食べることで、海の生態系に悪影響を及ぼす「マイクロプラスチック問題」を防ぐ狙いだ。
同社はロゴマークにクジラを採用しており、「クジラが暮らす海を守りたい」(服部代表)との思いから始めた取り組みだ。10月には、高知県香南市の岸本海岸で実施。加盟企業の社員らに加え、地元のボランティア団体などが参加し、ペットボトルやタイヤ、消火器などを回収した。集めたごみは200キログラムを超えたという。
リサイクルの仕組みや重要性を、一般向けに発信する取り組みも広がっている。自動車をめぐっては、新車生産において、使用済み自動車から回収した再生プラスチックの活用を模索する動きが活発になっている。しかし、それらが社会の隅々まで広く知られていないのが実情だ。このため、一般向けのイベントなどを通じた情報発信に力を入れている。
例えば、会宝産業(近藤高行社長)では、金沢市の本社で10月に「会宝リサイくるまつり」を開催して使用済み車の解体の様子などを紹介した。来場者数は親子連れを含めた約1200人で、「車の構造など、初めて知ることも多かった」との声も寄せられた。
こうした取り組みは、リサイクル業界を支える人材の確保にもつながる可能性がある。使用済み車の解体に当たるスタッフや、車両仕入れの営業職などの採用に苦労しているリサイクル事業者は少なくない。生徒や学生などが、実際に解体工場を訪れ、使用済み車から部品や資源を回収する現場を見る機会を設け、関心を持つきっかけにしている。
吉田商会(吉田恭平社長、愛知県豊橋市)では今夏、市内にある県立豊橋工科高校と市立豊橋高校の工場見学を受け入れた。エアバッグの取り外しや車両の解体などを紹介した。今後も、希望があれば積極的に応じる方針で、吉田社長は「小学生が将来やってみたい仕事のランキングの上位に入るよう、これからもアピールを続けていく」としている。
SDGs(持続可能な開発目標)の実現が大きな社会課題となる中、リサイクル関連の各事業者や団体は、こうした地道な活動を今後も継続していくことで、環境保全とリサイクルの認知拡大につなげていく方針だ。
| 対象者 | 一般,自動車業界 |
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日刊自動車新聞 12月10日掲載















