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2025年12月5日

連載「新章 チームスズキの挑戦」第3部 ものづくりの進路(上)マザー工場

「太陽光と重力はタダ」。故・鈴木修相談役は工場づくりでこう考えていた。国内工場は自然光が入る構造で蛍光灯は最小限。効率化の設備も重力を用いたお手製だ。知恵を絞り徹底的なムダ削減で競争力を磨いてきた。しかし、人手の確保が最大の課題になり、生産の軸足もインドに移っている。国内工場をどう位置付け、高品質を維持していくかの課題に直面している。


インド生産は210万台で30年度には400万台の生産体制を整える計画だ。

 「フロンクス」や「ジムニーノマド」などインド産の日本への供給も増えている。グローバルで供給できる車種を増やすことが効率化につながるためだ。今後インド生産車の供給は増える見通しだ。

 日本は99万5千台(2024年度)。コロナ禍を経て22年度以降は90万台以上で、23年度には5年ぶりに100万以上を生産した。国内ではトヨタ自動車(約324万台)に次ぐ規模だ。

 四輪工場は、主に軽乗用車生産の湖西工場と、登録車生産の相良工場、軽商用車などを生産する磐田工場の3カ所。10車種以上を生産する。

 国内工場の役割はどうなるのか。鈴木俊宏社長は「設計や生産の技術力高める実践の場。最新技術を研究する場」と話す。いわゆる「マザー工場」という位置付けだ。そのため「年100万台規模(を生産できる)整備をしておかねばならない」(俊宏社長)と語る。

 ある関係者は「日本で生産し、日本でのみ販売する車種を守ることも大事だ」と話す。軽や小型車「ソリオ」「クロスビー」という日本専用車種の生産をいかに維持できるかが、工場の操業に大きくかかわる。最近はスズキの国内販売は好調が続く。販売に占める登録車の割合も高まり、軽自動車も伸びている。

 今後、市場が縮小する国内では、現行モデルを存続するかどうかも焦点になる可能性がある。実際、10月に大幅改良したクロスビーは「残すかを含めて議論した」(別の関係者)という。

 最大の課題は人手不足だ。生産を担当する市野一夫専務役員は「(人を)採用できない。海外人材にも手伝ってもらいながら生産している」と厳しさを語る。

 人手に頼らず、安定的な生産と高い品質の両立が求められている。3年ほど前に立ち上げたのが「SSF(スズキ・スマート・ファクトリー)」というプロジェクトだ。

 第1弾が6月に稼働した湖西工場の新塗装工場だ。40年ぶりの刷新となった。ロボットを120台導入し、自動化率をそれまでの2割から5割に高めた。直接作業員は3割減った。「高品質を(今後)40年維持する」のがテーマになっている。

 4つの工場については建て替えはしないが、30年度までに約1500億円(グローバル分含む)を投資し、自動化などスマート工場の実現を目指す。

 

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞12月5日掲載