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2025年12月3日

〈車笛〉トヨタ博物館が企画展 JDMってなに? 海外から見たニッポン 未来を託す1台を選ぶ企画も

 国産の名車を集めた「What ‘s (ワッツ)JDM?―世界が熱中する’80~’90年代の日本車―」が、トヨタ博物館(愛知県長久手市)で開催されている。JDMとは「ジャパン・ドメスティック・マーケット」の略。欧米を中心に日本国内専用車を輸入したり、カスタマイズしたりして楽しむ日本車文化のことをいう。元々は現地のコアなファンの間で始まった動きだが、当時の独自のデザインや技術、性能に対する評価が年々高まっており、一般にも関心が広がっている。

 ■25年ルールで解禁、憧れの車のオーナーに

 富士山やお城、鳥居に都会のビル群―。独特の色合いのパネルから飛び出す1台の車がある。1989年に発売した日産自動車の「スカイラインGT―R」だ。今回の展示のシンボルカーであり、JDMを語る上でも欠かせない。

 米国では右ハンドル車の輸入を制限しているが、製造から25年経過すると対象から除外される。

 「GT―R」は、映画「ワイルドスピード」で主人公がハンドルを握ったファン垂涎(すいぜん)の車。それが「25年ルール」により2014年に米国で登録ができるようになった。以降、JDMブームはスポーツカーにとどまらず、さまざまな車に広がった。


来場者を迎える日産「スカイラインGT―R」

 

 ■30~40代が支持、JDMの今

 トヨタ博物館学芸員の谷中耕平氏は、近年の特徴として「ごく一部のサブカル的な枠組みから一般社会に出てきた」と指摘する。映画やアニメなどで日本車に親しんだ30~40代が支持層の中心になりつつあるという。

 企画展では、「技」「唯」「凝」をキーワードに、海外で人気を集める80~90年代の日本車を常時10台展示している。26年1月14日以降に展示替えを行う予定で延べ15台を披露する。「この10台が集まること自体、かなり貴重」と話すのは、今回の企画を担当した同博物館の岩澤光一郎氏。開催に当たり、車両を保有する各自動車メーカーや博物館の協力を得た。

 ■技―走行性能を支える電子制御技術

 三菱自動車の「ランサーエボリューション」は、1996年から4年連続で世界ラリー選手権(WRC)ドライバーズチャンピオンを獲得し、欧州でもファンが多い。「日本のモータースポーツの強さを象徴する1台」(岩澤氏)という。隣にはライバルとして共に戦ったスバルの「インプレッサ WRX」が並ぶ。


左から三菱「ランサーエボリューション」、ホンダ「インテグラ タイプR」

 ■唯―欧州から学び磨かれた独自のデザイン

 ダイハツ工業の「シャレード デトマソ」は、当時協業関係にあった伊デ・トマソ社との合作だ。赤と黒の印象的な配色が若者たちの憧れの的となった。「中古車市場でもほぼ流通していない」(同)という。


左からダイハツ「シャレード デトマソ」、日産「PAO(パオ)」

 ■凝―箱庭文化を映す軽自動車

 小さなボディーにいかに装備を搭載するか。軽自動車の進化は挑戦の歴史でもあった。「欧米では、コンパクトカーなどは足車(あしぐるま)の扱いで技術を詰め込むことは少ない」(谷中氏)と説明する。

 「平成ABCトリオ」こと、マツダ「オートザム AZ―1」、ホンダ「ビート」、スズキ「カプチーノ」が展示替えでそろい踏みする1月14日以降も必見だ。

 ■あなたが選ぶ未来の名車

 会場では、30年後に名車となる現代の車を来場者が予想し、投票できる。「〝あの頃は良かった〟で終わらせてほしくない」と、谷中氏は話す。アート作品のように、後世に評価が高まることは、車でも同様に起こり得る。古き良き時代を知ることで、未来を託す1台がきっと見つかることだろう。


トヨタ「スプリンター トレノ」


左から2番目がマツダ「アンフィニ RX─7」、その右がスバル「インプレッサ WRX」


右からスズキ「セルボ・モード」、ダイハツ「ミラ」


当時のカタログを配した壁面にも注目

カテゴリー 展示会・講演会
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞 12月3日掲載