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2025年12月1日

〈岐路に立つ自動車税制〉後藤茂之衆議院議員(自民党)に聞く 暫定税率廃止の減収分 関係諸税への付け替え考えず

 自民党・税制調査会で小委員長代理を務める後藤茂之衆議院議員が日刊自動車新聞の取材に応じ、今年末で廃止されるガソリン税の暫定税率の代替財源に関し、「自動車関係諸税で単純に埋め合わせることは考えていない」と述べた。まずは、見直しを進めている政策減税「租税特別措置(租特)」の改廃などで財源を確保することを検討していく。また、自動車業界が求めている「環境性能割」の廃止に関しては、「取得時の負担軽減につながる」と理解を示す一方、課税対象の約8割が電動機構のないガソリン車のため、廃止すれば「環境性能の高いクルマを購入するインセンティブが弱まってしまう」とも危ぐする。

 ――今年は車体課税の改正議論が行われる〝表年〟に当たる。車体課税の在り方を検討していく中で要となる点は

 「取得時の負担軽減など課税体系の見直しと、重量・環境性能に応じた保有時の税負担の在り方の検討だ。加えて、パワートレイン間で税負担に差が出ないよう、公平性を担保する必要もある。これらに関しては、2024年末に公表した与党税制大綱で『26年度税制改正で結論を得る』としており、議論を進める必要がある」

 ――取得時の負担軽減でいうと、自動車業界が長年、廃止を求めてきた環境性能割がある

 「総裁選の期間中には、高市早苗総理が環境性能割を2年間限定で停止する考えを示された。そういった総理の発言も踏まえて検討していくことになる。環境性能割が廃止されれば、ユーザーの負担軽減につながる一方、減収が生じる。受益者負担の点から、道路インフラの維持・管理に必要な財源をどうするかという議論は避けられないだろう」

 ――ガソリン税の暫定税率の廃止で、国・地方で1.5兆円規模の減収が見込まれる。代替財源は今後1年程度で結論を得るとしているが見通しは

 「減収分を自動車関係諸税に付け替えることは考えていない。安定財源を確保するために、まずは租特や高所得者への課税措置の見直しを検討していく。ただ、これらの対応をしても足りなかった場合は、二酸化炭素(CO2)の排出や、(燃料課税の一部が道路整備費に充てられているため)原因者負担の観点から道路利用者に負担を求めていく可能性はある」

 ――暫定税率の廃止は、環境政策に逆行しているとの声もある

 「環境省の試算によれば、暫定税率の廃止により、30年のCO2排出量が約610万トン増加するという。環境性能割を恒久的に廃止すると仮定すると、更に排出量が100万トン以上増える見込みだ。燃費性能の低い車を優遇し続ければ、脱炭素に逆行するというメッセージになりかねない。燃費性能の高い車の購入を促す税制にしていくことが必要だ」

 ――電気自動車(EV)への課税の在り方はどうあるべきか

 「EVは、自動車税種別割で最低税率が適用されており、燃料課税に相当する負担もない。パワートレイン間の公平性を保つためにも、重量による道路への負荷や高額なEVに対し、見合った負担を求めていく必要があるのではないか。また、EVの中でも環境性能に大きな差があるため、より性能の高い車に移行を促す仕組みも必要だ。経済産業省が求めている新しい保有税案は、重量と環境性能が課税基準としており、(この考えが)盛り込まれていると思う」

 ――中長期的には「受益者の広がり」を踏まえた税体系を構築していく。見通しは

 「カーシェアリングサービスやリースなどによる、利用の広がりで、受益者は車の保有者に限定されない時代になってきた。モビリティサービスの利用者に最終的に転嫁していくという議論もあるが、まずは使途を明確化すること、国民や関係者に理解してもらうことが重要だ」

 〈プロフィル〉ごとう・しげゆき 東京大学法学部卒業後、1980年大蔵省(現財務省)入省。主税局企画調整室長などを務めた後、2000年に長野4区から出馬し、衆議院初当選。厚生労働相などを務め、現在は自民税調幹部として税制改正議論に携わる。もともとクルマ好きで、米ブラウン大学院生時代は愛車のスポーツカー(日本車)でハイウエードライブを楽しんでいた。1955年12月生まれ、69歳。

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞12月1日掲載