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2025年11月20日

スズキ、国内でブランド力向上へ 「バイ・ユア・サイド」掲げ 量より質を追求

 スズキが、国内市場でブランド力向上に取り組んでいる。強みを持つ軽自動車に加え、登録車でも品ぞろえを増やしており、充実した商品構成を生かせる力を販売現場で高めるためだ。2030年度を最終とする中期経営計画では、顧客に寄り添っていく意識を販売会社も共有するため、「バイ・ユア・サイド」のスローガンを掲げた。さらに、これまで販社の営業スタッフを対象に行ってこなかったロールプレーイングの全国大会を実施し、人的能力の向上にも本腰を入れる。量ではなく、〝質〟も追求し、「成長市場」と位置付ける国内での勝ち残りにつなげる狙いだ。

 「チームで(ブランド力強化で)やろうとしていることを示したかった」と、日本営業本部長の玉越義猛常務役員は新たな競技大会への思いを語る。

 18日にグランドホテル浜松(浜松市中央区)で、「スズキ営業ロールプレイング全国大会」を同社で初開催。直販や業販を担当している全国の営業スタッフを集め、顧客対応のスキルを競った。合わせて行った「スズキサービス技能競技会フロント競技全国大会」も、まだ2回目。今、販売現場の第一線にいるスタッフにスポットを当てるのは、「チームスズキ」として一体感を高めて顧客への対応力を底上げする必要があると考えたからだ。

 同社では、一般客だけではなく、スズキ車の販売やサービスを支えている業販店と接している販社のスタッフの対応力が、顧客満足(CS)や深い関係づくりに役立つとみている。スズキ車の魅力や業販施策などを正確に発信していけば、値引きに頼らず、チーム全体で収益を高められる販売基盤が構築できる。そこで、これまでは販社単位で行っていたロープレ大会を全国大会に昇格させ、一人ひとりの活動に光を当てていく方針だ。

 また、ブランド力向上のために、24年10月に投入したSUV「フロンクス」から国内販売の手法も大きく変えている。従来は新型車の発売日まで情報を解禁していなかったが、今では発売前から露出を増やす取り組みを始めた。一般客のティザーサイトを設けたほか、メディア向けの試乗会なども拡大している。

 それには、「私たちが想定している以上にスズキのことを知らない人がいる」(鈴木俊宏社長)との危機感がある。長年、シェアトップを争ってきた軽では知る人が多いものの、世界では軽以外でも戦っている。「国内で、商品を知ってもらう取り組みをもっとやらなければ」(同)、競合が多い中で埋没してしまう懸念を持っていた。

 フロンクスで切り替えた活動が功を奏し、24年度の国内販売台数は前年度比6.4%増の71万8千台で、このうち登録車は過去最高の13万3千台を記録した。石井直己副社長は「発信を増やしたことで、顧客が感じるスズキの価値が徐々に上がっている実感がある」と語る。これを国内でさらに根付かせることができるか、販社や業販店施策を含めたスズキの国内戦略に注目が集まっている。

SUVの新型フロンクスから国内販売の手法を大きく変更している

ロープレ大会を通じ、スズキ車の魅力や施策を正しく伝えてもらいたい考え

対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞 11月20日掲載