2025年11月19日
サプライヤー、米国関税対応の価格転嫁が着々 収益への大打撃は回避
米国に輸出している部品の関税相当額を取引価格などに上乗せし、収益への影響を回避する自動車部品メーカーが増えてきた。自動車メーカー側にとっては重荷だが、部品メーカーは米国の追加関税による直接的な影響は避けられる見通し。米国では日本製ハイブリッド車(HV)の販売が好調なことも明るい材料だ。ただ、インフレの進行に伴う米国新車市場の先行きを不安材料と見る部品メーカーも多い。
米国政府が指定する自動車部品の関税は5月に25%の追加関税が課せられ、その後、9月に15%に引き下げられた。部品に含まれる鉄鋼・アルミニウム材料部分については50%の追加関税が今も課せられている。
デンソーは、2025年4~9月期に関税分で380億円の減益影響があったが、納入先との価格交渉も進展しており、第3四半期(10~12月期)以降、関税影響は圧縮される見込みだ。ただ、通期の関税影響については、新たな地域や品目で関税が課せられるなどのリスクも拭えないため、1300億円を据え置いた。
今後は、輸出部品に含まれている鉄鋼材料の使用量や種類を精査するとともに、米国への生産移管を検討したり、現地生産計画を前倒ししたりする。松井靖副社長は、これらの取り組みを進めた上で「(関税分は)納入先に負担してもらう」と語った。
ホンダを主要納入先とする武蔵精密工業も、米国関税について「その分は回収できており、短期的には影響はなく、今後も納入先と(価格)交渉していく」(大塚浩史社長)としている。中期的にはホンダの現地生産シフトが予想されるため、北米域内の生産能力をフル活用して事業拡大につなげていく方針だ。同じくホンダ系のエフテックも、通期見通しで、米国の関税負担分をゼロにした。メキシコ工場から米国向けに出荷している部品の関税を含め「すべて取引先に価格に転嫁する形で請求しており、回収できている」という。回収までのタイムラグは発生するものの、関税による業績への直接的な影響は織り込んでいない。
鉄鋼を多く用いるベアリングを手掛けるNTNも等速ジョイントアクスルの関税影響について「売価転嫁の見通しが立ちつつあり、今期は9割程度、回収できる見通し」という。イーグル工業も、すでに対象製品の3割程度で関税負担分の価格転嫁が進んだ。今後も納入先との交渉進展が予想され、業績に大きな影響を受けない見込みだ。
まだ、関税影響を完全に回避しきれていない部品メーカーもある。ミツバは25年4~9月期に15億円の影響を受けたが、コスト低減などの自助努力で影響額を半分程度に圧縮する。通期で45億円の影響額は変えていない。今後、取引先に価格転嫁を求めていく方針だが、武信幸副社長は「関税分をすべて負担してくれると回答した取引先はまだない」と語った。
自動車メーカーと異なり、一定程度は関税影響を回避できそうな部品メーカーだが、米国の新車販売が減速すれば、輸出部品が減って売り上げや収益に響く。すでに販売テコ入れのためインセンティブ(販売奨励金)が増えているとの見方もあり、先行きは決して楽観できない。
| 対象者 | 一般,自動車業界 |
|---|
日刊自動車新聞 11月19日掲載












