INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2025年10月31日

日本メーカー、ネクスペリアの半導体出荷停止で対策急ぐ 幅広い使用で甚大な影響

オランダの中国系半導体メーカー、ネクスペリアの出荷停止問題が波紋を広げている。ホンダはメキシコでの四輪車生産を停止したほか、日産自動車やマツダなども影響を調査している。「種類が多く、幅広く使われており、供給が止まるとほぼすべての自動車メーカーが甚大な影響を受ける」(国内メーカー技術幹部)。生産継続に向け、各社は調査や対策を急ぐ。

 ネクスペリアは旧フィリップスグループ系で、現在は中国資本だ。「世界で30~40%のシェアを持つ」(メーカー技術幹部)というレガシー半導体やコンデンサ、ダイオードなど、幅広い車載電子部品を中国で生産している。

 中国商務省が10月4日に出した指示による出荷停止の影響は日本メーカーの海外工場にも及んだ。ホンダは小型SUV「HR―V」などを生産するメキシコの四輪車生産を28日から停止した。米国とカナダでも生産調整に入ったという。

 日産自動車も、29日朝から会議を開くなどして対策に追われている。チーフパフォーマンスオフィサー(CPO)のギョーム・カルティエ氏は「新しいホットトピックだと考える。確認のめどがついたのはティア1(一次部品メーカー)サプライヤーで、ティア2以降は評価中だ」と説明した。マツダも「生産への影響は出ていないが、サプライヤーと連絡を取って影響を調査中」(広報部)としている。

 サプライヤーも対応を急ぐ。ジェイテクトの近藤禎人社長は「直接的な影響よりも、ネクスペリアを使っている他のサプライヤーからのショートが懸念される」と話した。トヨタ紡織の白柳正義社長も「当社はそれほど影響が出る部品がないが、クルマ全体の生産影響を注視しないといけない」と話す。別のサプライヤー首脳は「コロナ禍の半導体不足などこれまでの経験を踏まえて調達ソースの複数化に取り組んでいる。特にリスクのある中国製部品をあらかじめ割り出している」という。

 サプライヤー関係者は「供給を完璧にするのは無理で、時間とともに影響がぼろぼろ出る。3カ月前なら対応できるが、今回はいきなり起きたため問題になった」と語った。世界にまたがるサプライチェーン(供給網)を持つ自動車産業。地政学リスクと有事への備えの難しさが再び露呈した。

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞10月31日掲載