2025年10月29日
自動車業界で広がるか「指定価格制度」 在庫リスク回避へ カー用品やEVでも
家電業界で広がる「指定価格制度」を模索する動きが自動車業界で静かに広がり始めた。自動車用品が代表例だが、新車でも導入事例がある。メーカーにとっては値崩れを防ぎ、商品改良コストの削減につながる。販売会社は在庫リスクを減らせる。定着するかどうかは未知数だが、自動車用品小売業協会(APARA)の小林喜夫巳会長(オートバックスセブン特別顧問)は「販売店としても先回りして準備しておくことが重要だ」と話す。
指定価格制度は、パナソニックが2020年に試行し始めた。在庫リスクをメーカーが背負う代わり、小売価格を指定する仕組み。独占禁止法では、メーカーが小売店に対して売価を指定する「再販売価格の拘束」を禁じているが、指定価格制度は在庫リスクをメーカーが持つため同法違反には当たらないという。
パナソニックは制度の導入後、対象商品を増やしているほか、家電業界では日立製作所も追随した。
自動車用品業界では、品番数が多く、必ずしも値引きする必要がない商品で、指定価格制度に近い「消化仕入れ」と呼ぶ仕組みがすでにある。対象商品はタッチペンなどに限られるが、APARAの小林会長は「カーセキュリティー用品などから適用が広がっていく可能性はある」と予想する。同じような特徴を持つ商品なら、販売店が在庫リスクを背負わずに済む利点が大きいためだ。量販店側へこうした制度を導入するよう働き掛けている用品メーカーも一部ではあるようだ。
ゼネラルモーターズ・ジャパン(GMジャパン、若松格社長、東京都品川区)は、今年発売した電気自動車(EV)「リリック」で「エージェントモデル」と呼ぶ販売制度を採用した。GMジャパン側が在庫を持ち、全国一律の価格で販売する。車
両価格が1100万円と高額な上に需要が読みにくいため、販売店の在庫リスクを配慮したという。
今のところ、他のインポーター(輸入事業者)やメーカーで同様の事例はなさそうだが、スズキのEV「eビターラ」の販売担当者は「在庫リスクが厳しいため見送ったが、議論の中では検討した」と明かす。EVを中心に導入が広がる可能性もある。
もちろん指定価格制度は万能ではない。インセンティブ(販売奨励金)や商品改良の増加に伴うコストは減らせるものの、在庫リスクはメーカーが背負うことになるし、値引きによる販売促進策が打ち出せず、シェアを失う可能性もある。販売側は価格だけではなく、顧客の応対力や独自のサービスでの競争を迫られることになる。電動化、知能化の進展とともに、人口減などで事業の効率化をいっそう求められる自動車業界。こうした新たな仕組みの行方が注目される。
| 対象者 | 一般,自動車業界 |
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日刊自動車新聞 10月29日掲載












