2025年10月14日
〈ひと〉国土交通省 物流・自動車局長に就任した 石原大さん
観光庁の企画官だった2009年、政権交代が起きた。予算をまとめていたタイミングでもあり、省内には緊張も走ったが、着任した前原誠司国交相からは「これまでの延長ではなく、インバウンドも踏まえ、観光庁の予算を考えてくれ」と声をかけられたという。結局、予算要求額は前年度の4倍近い数字に。「われわれ役人の立場から見ると衝撃的な数字だった」と振り返る。最終的な予算額は前年度の2倍超となり、初めて100億円を超えた。
物流現場では、人手不足や生産性向上など課題が山積している。しかし「20年以上前から課題は変わっていないと感じる。商慣習を含め、荷主を含めた事業者の意識改善が急務だ」と気を引き締める。国は物流関連法を改正し、荷主を含む業界全体に行動変容を促しつつ、規制もジワリと強めている。「20年前と比べると労働環境は確実に改善されてきているが、積極的に現場に足を運んでいきたい」と語る。
過疎地などでは公共交通機関の維持が難しくなってきた。しかし「移動の足を維持することは地方創生の基盤にもなる。事業者とともに、もう一歩、二歩前に出て考えていく必要がある」と将来を見据えた政策が重要であると話す。「日本版ライドシェア」を視察した際、「ZOOMなどを用いて点呼や体温測定、アルコール検査などを徹底して行っており、感心した」とも。「移動の安心、安全を担保する上でもドライバーの管理は大切だ」と評価する。
将棋が趣味で、学生時代には「アマチュア2段」相当の実力と認定を受けた。読書好きでもあり、マニュエル・トッド著「西洋の敗北」を推す。また、中日ドラゴンズの元監督・落合博満氏の実像に迫った「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか」を読み「落合監督への見方が変わった。組織を動かしていく手法などは興味深かった」と話す。ただ、自身はジャイアンツファンだとか。
〈プロフィル〉いしはら・だい 東京大学法学部卒業後、1992年運輸省(現国交省)入省。道路局総務課長補佐、自動車交通局貨物課長補佐、観光庁総務課企画官、航空局航空戦略課長、大臣官房公共交通政策審議官、内閣官房内閣審議官などを経て25年7月から現職。1968年12月生まれ、56歳。神奈川県出身。
日刊自動車新聞10月14日掲載