2025年10月6日
自民・新総裁に高市早苗氏 税制、物価対策、通商交渉…課題に道筋つけられるか
高市早苗新総裁
4日の自民党総裁選挙で高市早苗前経済安全保障相(64、当選10回)が新総裁に選出された。15日にも臨時国会が召集される見込みで、高市氏は首相指名選挙で新首相に選出される公算が大きい。ただ、衆参とも与党が過半数割れするなか、政権運営は難路が必至だ。通商政策や経済対策、税制改正の影響を強く受ける自動車業界としても、新政権が外交や内政でリーダーシップを発揮できるか注視する。
総裁に選ばれた高市氏は「嬉しいよりこれからが大変だ。力を合わせてやることが山ほどある。全員に働いていただく。私自身も働いて働いて働きまくる」と語った。
自動車メーカーの渉外担当幹部は「高市氏はこれまでも自動車関連団体の開く会合などに積極的に出席して意見や要望を聞いてくれた。国内の自動車産業の発展につながる政策を打ち出してくれることに期待している」と語る。
高市新総裁が仮に首相に選任された後、まず注目される自動車関連政策がガソリン税の暫定税率(当分の間税率)の見直しだ。ガソリンには現在、1㍑当たり25.1円の暫定税率が上乗せされているが、原油相場が高止まりする中、物価高対策の一環で年内に廃止することで与野党は合意した。しかし、代替財源論などで議論は膠着(こうちゃく)している。
自民党幹部も暫定税率を早急に廃止する意向を示している。代わりの財源として金融所得課税の増税や法人税の租税特別措置の見直し、さらに2026年度の自動車関連税制の見直しで調整するとの観測もある。もっとも自動車関連企業の幹部は「ガソリンの暫定税率を廃止する代わりに、自動車に関する税制が現行制度よりも増税になるなら本末転倒だ」とけん制する。ある政府関係者は「ガソリンの暫定税率が廃止になるとガソリン車を選ぶ人が増えてくる。そうなると日本のEV(電気自動車)の普及がさらに遅れるかもしれない」とも予想する。
暫定税率の廃止については与党が臨時国会で関連法案を提出する可能性もあるが、先行きは不透明なままだ。政局が流動化する中、新首相が暫定税率の廃止を含めた物価高対策をまとめられるか、まずは手腕が試される。
また、新政権下で自動車関連税制の抜本的な見直しが進むかどうかも関心事だ。自動車関連税制は、過去の議論により、年内に抜本的な見直しの方向性を「税制改正大綱」に盛り込むことになっている。しかし、参院選後に首相辞任の是非をめぐり自民党内が混乱し、関係部会や税制調査会(税調)などでの議論はほぼ手つかずだ。高市総裁のもとで党内人事もあるため、政府関係者は「今年は車体課税の抜本的な見直しが重要なのにもう時間はない」と嘆く。
政治が混乱する中で、自動車業界には〝トランプ関税〟の影響が重くのしかかる。日本から米国に輸出する自動車の関税は9月に27.5%から15%に下がったが、今年3月までは2.5%(乗用車)だった。自動車業界からは政府に対して、国内新車需要を刺激する支援策を求める声も強い。経済産業省が26年度税制改正で要望している(軽)自動車税の「環境性能割」の廃止を求める声が強まる。しかし、代替財源などの議論によっては、26年度改正での実現は難しいとの見方もある。
政府関係者によると、環境性能割を一部見直し、現行より課税負担を時限的に減らして新車販売を下支えする案を軸に調整が進む可能性がある。
日本の経済や雇用を支える自動車産業が厳しい状況に立たされる中、新政権が外交や内政で指導力を発揮し、産業政策や自動車税制改正などに新たな道筋をつけることができるか、それとも思うように政権運営ができず、いたずらに時間を浪費するのか。先行きが注目される。
カテゴリー | 人事 |
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対象者 | 一般,自動車業界 |