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2025年9月22日

損保協会長、保険の比較推奨販売 乗合代理店は「契約者満足得る努力を」

 日本損害保険協会(損保協)の舩曵真一郎会長(三井住友海上火災保険社長)は、都内で定例会見を開いた。保険業界向けの金融庁監督指針改正で争点となっている乗合代理店の比較推奨販売について、「契約者に満足してもらえる商品を提起するよう努力することは、代理店に課された役割なのでは」と指摘した。

 
     舩曵 真一郎会長

 旧ビッグモーター問題をめぐっては、ディーラーを含む大規模乗合代理店が自社の都合で店舗ごとに推奨商品を決める「テリトリー制」の弊害が指摘された。契約者の利益より代理店や損害保険会社の利益が優先されて商品が売られる恐れがあるからだ。金融庁の有識者会議などで出た。

 さらに、2024年11月施行の改正金融サービス提供法に抵触することも問題視された。同法では顧客の最善の利益を考え誠実に対応することが全ての金融事業者に義務付けられたためだ。

 このため金融庁は、代理店の都合で推奨商品を決められる根拠となっていた保険業法施行規則(省令)の一部削除を決めた上、新たな監督指針を現在策定している。

 一連の制度改正により、代理店の都合による推奨商品の販売は認められなくなる。しかし、ディーラーなどからは「『代理店に任せる』『どれでもいい』と言う顧客もいる。逐一、複数商品を提示・説明するのは負担が重い」との声も聞かれる。

 舩曵会長も三井住友海上のトップとして代理店と対話を重ねる中で、同様の論点がたびたび出ることを明かす。ただ、「『任せる』という言葉の真意は、『どうでもいい。私は関係ない』ということではなく、『あなたに任せれば、もっとも適した商品を選んでくれますよね』という期待では」との考えを示した。

 その上で、契約者が保険料、補償内容、付随サービス、手続きの簡素さといった各要素のうち、どれを重視しているのかを見極めることの重要性を指摘。「どうすれば契約者が結果として満足できるプロセスを構築できるのか、代理店との対話を通じて、努力していかなければ」とも述べた。

 損保協では保険販売の質を高めようと、7月からトライアルとして「自己点検チェックシート」を代理店に送付している。表計算ソフトウエア上で、「保険会社の委託を受けた立場でありながら、『公平・中立』といった表示や説明を行うなど、顧客に誤認を与えるような行為はしていない」といった項目にチェックを付けていくものだ。この結果を踏まえ、損保会社と代理店での適正販売につなげる狙いだ。

 チェックシートは26年度に、公募意見などを反映して改訂し、本格運用する方針だ。25年7月下旬から1カ月間で、約900件の意見が寄せられたという。中には、「乗合代理店として、複数の損保会社の社員と対話をしている。会社間、社員間で理解度にばらつきがあるので、社内できちんと研修してから対話に臨んでほしい」「チェックシートの記載方法を損保の営業社員に聞いたところ『作成者の損保協に聞いてほしい』と回答を得られなかった」といった否定的なものもあったという。

 舩曵会長は「多くの代理店は前向きな取り組みだと評価しているが、チェックシートの浸透を一段としっかりしていく必要性を認識した」としている。

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞9月22日掲載