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2025年9月17日

学生フォーミュラ日本大会2025 今年も熱気 最高得点は京都工芸大(ICV)と名古屋大(EV)

 学生自らが設計・製作したフォーミュラカーの完成度を競う「学生フォーミュラ日本大会2025」(自動車技術会主催)が8~13日、愛知県常滑市の愛知県国際展示場(アイチスカイエキスポ)で開催された。今年で23回目。単なるスピード勝負ではなく、設計思想やコスト管理、プレゼンテーション能力、さらには耐久性に至るまで幅広く評価されるのが大きな特徴だ。昨年を上回る84チームが集まり、会場は熱気に包まれた。

スピードだけでなくプレゼン能力なども競った

 大会は一昨年まで行われていた静岡県袋井市の小笠山総合運動公園(エコパ)から会場を移して2度目の開催。車両区分はICV(ガソリン車)とEV(電気自動車)の2クラスで、ICVには59チーム(前年54チーム)、EVには25チーム(同21チーム)が参加した。最終日に悪天候で競技が一時中断することもあったが、無事に全行程を終えた。クラス別では、ICVは京都工芸繊維大学、EVは名古屋大学EVチームが最高得点を獲得した。

 〇走行まで一貫

 審査は、参加校を仮想ベンチャー企業と見立て、設計や製造工程、コスト管理、プレゼンを競う「静的審査」と、加速や旋回性能、燃費・電費を評価する「動的審査」に大別される。構想段階から実車走行までを一貫して経験できることが、この大会の最大の魅力といえる。

 出場学生からは「教室や実験だけでは得られない実践の重みを感じられる」「設計、調達、加工、組み立て、走行試験まで一通り体験できるのは貴重」といった声が相次いだ。

 会場には自動車メーカーや部品企業の担当者も足を運び、ブース展示を通じて最新技術を紹介。学生との対話も盛んに行われ、産学交流の場としての側面も色濃く表れていた。

 〇EVや多様性

 近年はEVクラスの参加が増えている。今回からICVとEVは完全に独立した競技形式となり、次世代モビリティを意識した大会の姿勢がより明確になった。

 EV車両の設計には、BMS(バッテリーマネジメントシステム)、モーター制御、軽量化、安全設計など独自の難題がつきまとう。学生にとっては新しい学びの領域であり、環境技術や持続可能性をテーマにした研究的要素も濃い。大会そのものが「未来型エンジニア育成の場」へと進化しつつある。

 フォーミュラ活動を授業に組み込む大学も増え、企業支援を受けてプロジェクトを進める例も少なくない。設計や製造にとどまらず、資金調達やスケジュール管理といった実務的スキルも学生の手で担われる。

 また、大学のみならず高専や専門学校からの参加も拡大。海外チームとの交流を通じ、設計手法や技術トレンドを比較する機会も得られている。

 〇企業の熱視線

 自動車業界の期待も大きい。実践型教育の場として、学生フォーミュラを「次世代エンジニア養成のモデル」と評価する声は多い。スポンサー企業や業界人が直接学生と接点を持つことで、キャリア形成の一助となるケースも少なくない。

 一方で、メンバー交代によるノウハウ継承の難しさや、細かなレギュレーションへの対応など課題もある。これに対し、自動車技術会や大会運営側は、安全確保、技術相談、資金支援などのサポートを強化。学生フォーミュラを「より質の高い学びのプラットフォーム」とするための環境整備が進められている。

日刊自動車新聞9月17日掲載