一般社団法人 日本自動車会議所

会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2025年9月17日

自工会と部工会、適正取引の推進を要請 会員企業に連名で初の書簡 逆風下でも手を緩めず

 日本自動車工業会(自工会、片山正則会長)と日本自動車部品工業会(部工会、茅本隆司会長)は、適正取引の推進を要請する書簡を初めて連名で会員企業に送付した。両団体は2022年末から価格転嫁の推進を会員に呼び掛けてきた。人手不足や米国の高関税など事業環境は厳しさを増しているが、こうした逆風下でも取り組みの手を緩めず、これまで以上に適正取引と競争力強化を進める考えだ。

自工会、部工会による正副会長懇談会(7月)

 書簡は8日に自工会、部工会の会員企業、合わせて約450社に送付した。「労務費の価格転嫁」「型取引の適正化」の2点について、改めて取り組みを進めるよう求める内容だ。自工会調達部会の加藤貴己部会長(トヨタ自動車調達本部副本部長)は「両会長の連名は会員企業だけでなく対外的にも非常に強いメッセージになる」と説明する。米関税をはじめ厳しい事業環境下において「サプライチェーン(供給網)全体で競争力強化に向けて取り組む重要性を浸透させたい」とも話す。

 両団体はこれまでも適正取引の浸透に向けた連携を進めてきた。適正取引と付加価値向上につながる取引慣行の普及・定着に向けた重点課題をまとめた「自主行動計画」を17年3月に策定し、実効性を高めるための「徹底プラン」も逐次、改定している。23年からは、自動車産業が集積する群馬県(スバル)、静岡県(スズキ、ヤマハ発動機)、広島県(マツダ)など9地域において適正取引に関連するセミナーを共催してきた。

 同年からは、自工会の調達部会と部工会のサプライチェーン部会の意見交換会を月1回の頻度で実施。24年7月には両団体の正副会長懇談会を初開催し、さらなる連携体制強化に向け、自動車メーカーの調達責任者と部品メーカーの幹部による意見交換会として「マネジメントコミッティ」を四半期、「ステアリングコミッティ」を月1回ごとに開催することを決めた。

 25年からは①適正取引の更なる推進②競争力の強化③新たな価値/社会要請への対応―の3つを柱にそれぞれ連携強化テーマを決め、実務面のリーダーが集まる会合も開いている。

 中小企業庁による25年3月の「価格交渉促進月間」フォローアップ調査結果によると、自動車・自動車部品業界の価格転嫁率は56.6%。前回調査(24年9月)より4.7㌽上昇し、全30業種中、7位につけた。しかし、取引階層が深くなるにつれて転嫁割合が低くなる傾向にあり、ティア(階層)の深い中小・小規模(零細)企業への浸透が課題だ。

 型取引についても課題認識を強めている。部工会によると、金型の無償保管を下請け企業に強いて公正取引委員会から違反勧告を受けた会員は25年1~7月で8社に及ぶ。部工会サプライチェーン部会の渡辺修自部会長(豊田合成調達本部長)は「自動車業界にとって、お客さまに長く安全に補給部品を供給するのは大切な仕組みだ。そのためには専用の型や設備などを長く持つことが必要になる。そういう商習慣があるのは事実」と話す。この習慣を踏まえた上で、型保管費を〝見える化〟する取り組みなどを通じ、適正取引や型の廃棄促進につなげる考え。

 両団体のトップが連名で書簡を発出した背景には、型取引に伴う違反勧告事例の多発に加え、4月に開かれた武藤容治経済産業相との会合で取引適正化の徹底を求められたからだ。武藤経産相は会合で「米国の関税措置で自動車サプライチェーンにも大きな影響が懸念される。中堅・中小部品メーカーに影響が及ばないよう適正な取引を確保する観点からも目配せをお願いしたい」と両団体に要請した。

 両団体は7月、3回目となる正副会長懇談会を開いた。「労務費の価格転嫁」「型取引と廃棄促進」について現状と課題の認識を擦り合わせ、具体的な指針を検討していく方針だ。16日、米国の自動車・部品に対する関税は15%に引き下げられたが、自工会の加藤部会長は「トランプ関税はあまりにインパクトが大きい。どんな影響なのか、何が起きているのかをファクトで捉え、自動車産業全体でどう課題を解決していくのが良いか、両団体が連携を密にしていく」と語った。

日刊自動車新聞9月17日掲載